【記者解説】生活保護が過去最多 非正規が多く、コロナの影響長期化


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 琉球新報が沖縄県内16の福祉事務所に行った生活保護に関するアンケートから、新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、県民生活に暗い影を落としている実態が明らかとなった。全国比較できる最新の2021年1月時点で、全国の生活保護利用者は前年同月比で0.9%減少する一方、沖縄は0.95%増加した。非正規労働者が多い本県の雇用実態では、今後も生活困窮者が増える可能性がある。

 生活保護の利用者が「微増」にとどまった背景として、福祉事務所と識者は共に、新型コロナ対策の給付金や貸付金など公的支援の利用を挙げる。一方で、支援制度が終了した後の不安についても指摘している。アンケートの自由記述には、生活保護の申請増加を想定する声が複数あった。

 20年度の県内の有効求人倍率は前年度比0.52ポイント減の0.79倍で、6年ぶりに1倍を下回った。雇用環境悪化は「最後のセーフティーネット」と呼ばれる生活保護と無関係とは言えない。

 生活保護は憲法25条が定める生存権を実現する制度で、利用する権利がある。支援現場からは「福祉事務所の対応が高圧的」といった声も上がる。コロナ下で相談活動の制限もあるだろうが、生活に窮した人たちが気兼ねなく制度を利用できるよう、行政には苦しい人たちに寄り添い続ける姿勢が求められる。
 (真崎裕史通信員)

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