【識者談話】生活保護の利用を「我慢」する要因は? 安里長従氏(司法書士)


社会
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安里長従氏

 生活保護の利用が微増にとどまっている背景には、住居確保給付金や社会福祉協議会が窓口になった貸し付けがあると思う。そもそも沖縄は捕捉率(生活保護基準を下回る経済状況の世帯で、実際に生活保護を利用している割合)が低い。生活保護やヤミ金の借り入れの相談も増えており、「権利はあるが我慢している人」が相当数はいるのではないか。

 「我慢」の要因にはスティグマ(負の社会的烙印(らくいん)、恥の意識)や自動車所有の問題などがある。保護率が高い那覇は都市部なので、スティグマが弱い。車を所有していても申請できる。働いていても、基準額に足りない分の補填(ほてん)を受けることができる。市民一人一人が「生活保護は慈善ではなく、権利だ」と認識する必要がある。

 沖縄は非正規雇用が多く、雇用体系が脆弱(ぜいじゃく)だ。低所得層が分厚く、固定されている。年齢を重ねても収入が増えない。

 新型コロナウイルス拡大で特に影響を受けたサービス業や飲食、観光業には非正規雇用が多い。雇用環境が改善されない限り、困窮する人たちがさらに増えるだろう。

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