生活保護最多3万8472人 解雇されて収入がない…コロナで困窮増加


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 県内の生活保護利用者が2021年2月時点で前年同月比458人増の3万8472人となり、20年10月以降、5カ月連続で過去最多を更新していることが分かった。琉球新報が全41市町村を網羅する県内16の福祉事務所にアンケートを実施し、集計した。福祉事務所には飲食や観光関係者を中心に「解雇されて収入がない」「客が来ない」などの相談が寄せられており、新型コロナウイルス禍が県民生活にじわりと打撃を与えている様子が浮き彫りとなった。

 一方、各福祉事務所は「想定したほどは増えていない」と、生活保護の利用が微増にとどまっているとの認識を示す。緊急小口資金など公的支援制度が利用の「抑制」につながっていると推測する。識者は「保護を受ける権利はあるが、恥ずかしいなどの理由で我慢している人が相当数はいる」と指摘。数字以上に貧困が広がっているとみている。その上で雇用環境の悪化を背景に、生活困窮者の増加を懸念する。

 県内の生活保護利用者の3割超を占める那覇市福祉事務所は、昨年3月から新型コロナ関連の相談を記録している。今年2月までに473件が寄せられ、相談者の業種は飲食25・9%、無職22・7%、観光16・1%、運送(タクシー、代行業)8・7%の順に多かった。「店をたたむ」「コロナで子どもの仕送りが無くなり、年金では生活できない」など切実な訴えが相次いだ。

 アンケートの記述欄には「給付金や貸し付けなどの活用で極端な増加には至っていない。年明けから保護申請が増加傾向にあり、今後(利用者が)増加に転じることも想定される」(宜野湾市)、「新型コロナが直接的な困窮原因という世帯は少なく、元々傷病などで就労が難しい状況に、コロナの影響も加わって困窮した世帯が多い」(沖縄市)などの声があった。

 アンケートの集計の結果、21年2月時点で、県内では3万399世帯が生活保護を利用しており、前年同月から623世帯増えた。新型コロナ禍前から沖縄県の生活保護率は高く、20年3月時点で、おおよそ千人に26人の26・3‰(パーミル=千分の一の単位)。全国で3番目に高く、利用者の約半数を65歳以上の高齢者が占めている。
 アンケートは3月下旬、各福祉事務所にメールかファクスで実施。生活保護の利用者数や申請件数などを尋ね、本紙が集計・追加取材を行った。 (真崎裕史通信員)

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