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苦労屈託身の薬 石川酒造場製造部課長・石川由美子<仕事の余白>


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石川由美子氏

 女性で泡盛の造りに詳しいと珍しがられることが多い。泡盛造りに関わるきっかけは20年前に品質管理の担当として入社したからである。入社してみると道具も仕事のやり方も確立されておらず、教えてくれる上司もいないという環境で、「これから品質管理をしてください」という状況だった。

 工程検査を行うためには作業工程を知る必要があり、担当のおじさんたちの邪魔にならないように現場に入り浸り、理解を深めた。お客さまからの問い合わせに答えるために商品について調べ、成分について調べ、関わる法律について調べ、どうにか回答を導きだしてきた。不具合が起きれば相談相手もいないまま改善策を考えなければならず、さまざまな場面で失敗の連続で何度も辞めようかと考えるほどであった。

 試行錯誤を繰り返しながら仕事をこなしているうちに、いつの間にか造りから製品化までどの工程も説明できるようになり、「女性なのに泡盛の造りに詳しい人」が出来上がったのである。

 現在の石川酒造場は品質重視を方針としてISO9001にも取り組むまでに成長し、一緒に動かしてくれる仲間にも恵まれた。当時はとても大変だったが、決められた仕事だけをこなして一つのことに精通するより、いろいろな工程を見ることができる今の方が面白くやりがいがある。今にして考えると、自分の考えで自由に仕事ができた恵まれた環境だったのかもしれない。