太くて短い…謎だらけのコロコロな個体
ナマコは不思議な生きものです。大きく目立つ体をごろりと横たえて、存在感は大きいのに、砂を食べる以外は何もしていなさそう。とはいえ、生きものなので子孫を増やします。見かけでは区別ができませんが、ナマコにも雌雄があり、放卵放精をします。水中で卵と精子が受精して、幼生が誕生し、稚ナマコに育つ…はずなのですが、実は数センチの小さなナマコを野外で見つけることは、まずありません。普段見かけるのは、ほとんどが数10cmの大きさに育ったものばかり。子どもがどこにいるのかは謎です。
さて、沖縄の浅い海によくいる黒いナマコのうち、小ぶりで、普段は砂をかぶっているのがクロナマコです。実はこのナマコ、卵を産む以外の増え方をします。ある時、体の真ん中がねじれて、細くくびれているのを見つけました。そう、分裂して2匹になるのです。そう思ってナマコを探すと、子どものナマコではなく、からだの太さはしっかり太いのに、長さが短いコロコロした個体が見つかります。ナマコは、口の方とお尻の方とで体の中の作りは違っているのに、なぜこれで生きていけるのか…。ナマコの体の再生能力はかなり高いとはいえ、体を作り直すのに数週間から数ヶ月はかかるでしょう。その間、ご飯を食べなくても大丈夫なのか、それとも食べているのか、どれくらいの頻度で分裂するのか、ナマコってそもそも何年生きるのか?ナマコの不思議は尽きません。
Vol. 39 クロナマコ
Holothuria atra
● 目:楯手目 Aspidochirotida
● 科:クロナマコ科 Holothuriidae
● 属:クロナマコ属 Holothuria
動画撮影:
クロナマコ 2020年10月1日、2021年3月29日(浦添市 西海岸パルコ前)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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