吉永小百合さん「家族のような雰囲気で撮影」 田中泯さん「共演は奇跡」 映画「いのちの停車場」インタビュー㊤


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 吉永小百合が初の医師役に挑戦した映画「いのちの停車場」(成島出監督)が21日から全国公開される。映画は、故郷に戻り父・達郎(田中泯)と暮らしながら、在宅医師として再出発する白石咲和子(吉永)と患者の姿を通して「いのちのしまい方」を描く。父子役の田中と吉永にインタビューし、役作りや互いの印象、撮影現場の雰囲気を聞いた。2回に分けて紹介する。 (聞き手・藤村謙吾)

(右から)インタビューに答える吉永小百合、吉永と初共演した田中泯=4月11日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター劇場棟(喜瀬守昭撮影)

Q:どのように役作りをし、撮影に臨んだのか。

 吉永 病院にうかがい、(医師の)先生方が働いていらっしゃるのを拝見して学ぼうと思ったが、撮影の前に新型コロナウイルス感染症が広がってしまい、行けなくなった。でも、東映の撮影所に救命救急の先生や在宅医療の先生が何度も来てくださり、手取り足取り教えてもらい、撮影に臨むことができた。

 田中 具体的な病気(に冒される役)だったので、病気を知り、病気の現れ(病状)を自分の体で実現(表現)していった。

Q:本作では、咲和子の帰郷先の診療所で共に診療をする訪問看護師役の広瀬すずや、医大卒業生役の松坂桃李と初共演している。撮影現場はどんな雰囲気だったか。

 吉永 映画の中で「家族」という言葉が出てくるが、最初からそんなにコミュニケーションを取らなくても、そういう気持ちになっていた。そういう雰囲気をつくってくれたスタッフ、監督らがいたからだと思う。最初にみんなで本読みをしたときから、とてもいいムードが流れていた。

Q:互いに共演して、どんな印象を抱いたか。

 田中 僕がお芝居や映画、演劇に関心を持たずに生きていた時代から吉永さんは存在していて、その人とご一緒し、まして親子という役。奇跡としか言いようがない。役を演じているのは自分。自分が生きているということと無縁なことが、僕なんかはできない。演技をすれば、僕の人生というか人間性が、どうしても幽霊みたいに、くっついてきてしまう。そういう意味では吉永さんの方がむしろ僕の変な気配を取り払うのに大変だったかもしれない。

 吉永 映画「たそがれ清兵衛」(2002年)で、この方(田中)の殺陣はすごいと思った。それまでは田中さんのことを存じ上げず、びっくりした。普通の俳優さんとは違う、鬼気(迫るもの)を感じた。まさかご一緒する機会があるとは思わなかった。いろいろ調べたら、年齢は一緒で、私が3日後に生まれただけということを発見してしまって。お若いのに、つくってお父さんになってくれていたので、申し訳なく思った。

 田中 セットの中に入ったとき、誰にでも「お父さん」という存在に見えるように(自分自身で)なっちゃった。吉永さんの空間というか、体の中から(生み出される)空間性、場づくり(にそうさせられた)。(吉永さんは)意識せずにそういう場をつくること(能力・技術)が、長い時間をかけてため込まれていると、驚きを感じた。