〈69〉引きこもり 精神疾患が潜む場合も


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

 新型コロナが猛威を振るっている昨今では、ステイホームが推奨されています。しかし、何カ月も家に閉じこもることに人々は耐えられず、GoToトラベルの合図とともに、せきを切ったかのように観光地や街に繰り出し、コロナ流行第2波、第3波を招き、現在は第4波の真っただ中にあります。しかしGoTo政策に影響されずステイホームの状態にある人たちがいます。いわゆる「引きこもり」の人たちです。

 もちろん、その人たちは好きこのんでステイホームをしているわけではありません。外に出るのが不安なのです。今だとコロナ感染の不安もありますが、主な不安は家族以外の他人と出会うことの不安です。その不安の背景には多くの場合、青少年期の挫折体験、例えばいじめ、受験や就職の失敗などがあります。一方、統合失調症やうつ病、アルコール依存症、各種神経症などの精神疾患が潜んでいる場合もあります。

 その人たちは家の中に引きこもることによって、他人から非難されているのではないか、変に思われているのではないかなど、二次的に派生する関係被害妄想などで外出することがますます苦痛となり、引きこもりが遷延します。

 若い頃に引きこもるようになり、今では50代となって、その人たちを80代の親たちが世話をしているという8050問題が、10年以上前から社会問題となっています。人は他人との関わりなしで生きていくのは困難です。世間から隔絶して一生を孤独のままに生きていくのは大変なことです。機会があればなんとか他者との交流や絆を保ちたいと思うのが人情です。

 不安や緊張を和らげる薬物療法で不安を軽減し、人前に出られるようになった人たちも大勢います。また、交流の場所として同じ引きこもりの人たちと活動できるデイケアや作業所など、閉じこもりから脱出できる支援の場も多くできています。沖縄県でも、長期的な視点で引きこもり支援を行っていくことを計画しています。ぜひ一度、病院や支援機関で相談されてみてはいかがでしょうか。

(仲本譲、博愛病院・精神科)