河野発言「子の貧困」違和感の正体 記者が感じた熱意と危うさ


この記事を書いた人 Avatar photo 玉城江梨子

written by 安里洋輔

閣議後会見で記者の質問に答える河野沖縄相=18日

 一瞬、違和感を覚えた。沖縄の日本復帰49年を前に行った河野太郎沖縄担当相へのインタビュー。話題が「子どもの貧困」に移った時のことだ。

 河野氏は、要因の一つに「10代などの若年層の妊娠」を挙げた。そして、こうも言った。

 「いかに若い人の妊娠率を下げるか、母子世帯の発生を抑えるか」

 河野氏は、いつもの会見時と同様にペーパーを見ずに自分の言葉で語った。

 手元のペーパーに目を落とし、誤りのない答弁をすることだけに腐心する政治家とは違う。記者の質問に身一つで対峙(たいじ)しようとする姿勢が、「次の首相候補」にも挙げられるゆえんなのだろう。ただ、だからこそもやもやしたものが残った。発言は、自身の偽らざる本音であろうからだ。

 河野氏の指摘は、一面では「事実」だ。「10代の妊娠中絶の実施率」「10代の女性の出産率」など、発言の根拠となったさまざまなデータを挙げた。

 そして、「生まれてくる子どもは誰もが同じ人生の機会、平等に恵まれなければならないと思う」と語った。その言葉には、困難な課題に取り組もうとする決意がにじんでいた。

 会見で、異例ともいえる約7分にも及ぶ時間をこの話題に割いた点にも、自分の意図を伝えようとする熱意が感じられた。この時もやはり視線は手元ではなく、前を見据えていた。

 だが、最初のインタビューで感じた違和感の払拭(ふっしょく)には至らなかった。その言葉の端々から「自己責任」という前提条件がついて回っているように感じたからだ。

 若年出産の当事者たちと関わる立場から、上間陽子琉球大教授は本紙に寄せた談話で「公の責任」を問うた。「単身でも貧困に陥らず、子どもを育てることができるという環境、社会をつくることが国の責任」という「公助」の視点だ。

 一方、河野氏は、国が担うべき「公助」の議論よりも先に、「性教育」という方策によって当事者たちの自律を促す「自助」の必要性を問うた。この議論の方向性のずれが違和感の正体だったように感じる。

 今回、河野氏の発言で図らずも「子どもの貧困」がいかに重い課題かが改めて明らかとなった。意味のあるインタビューだったと思うと同時に、後悔も残った。その場で即座に反応できなかった記者としての未熟さを痛感したからだ。われわれ県民一人一人が主体的に取り組まなければならない課題に向き合えているだろうか。

 沖縄は来年復帰50年を迎える。県は次代の沖縄社会の構築に向けて、SDGs(持続可能な開発目標)を軸に、「持続可能な沖縄の発展」「誰一人取り残さない社会」を目指す。解消すべき課題の一つは「子どもの貧困」である。掛け声だけで終わらせてはいけない。

【関連ニュース】

若年層の妊娠「褒められる話ではない」 河野太郎沖縄相が独自論 子の貧困、教育で展開

インタビュー全文「いかに若い人の妊娠率を下げるか」

【識者談話】「母子家庭になるな」は国の責任放棄 上間陽子氏(琉球大教授)

河野沖縄相、持論を再説明「性教育、響く形で」「母子サポート必要」

【発言全文】河野沖縄相、再び持論「性教育で人生の自己決定を」「進学率引き上げ最優先」