<シネマFOCUS>「奴隷牧場」リアルに描く マンディンゴ


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 19世紀半ばのルイジアナ州で、「奴隷牧場」を経営する父と息子の物語を軸に、当時のアメリカ南部の様子をリアリティーたっぷりに描いた本作。21世紀を生きるわれわれにとって、目を疑うような出来事が連続し、キツすぎる刺激に脳の活性化を促されたような新感覚を得ました。

 そもそも「奴隷牧場」というキーワードが、現代のコンプライアンスと呼ばれるものに照らし合わせると、多分絶対アウト。でも本作を見ている限り、19世紀のアメリカ南部において「奴隷牧場」はごく普通の商売で、どんな奴隷を所持し、どう活用しているかが、ステータスの物差しだったように見受けられる。

 だから当時の人たちにこの映画を見せても、全然驚かないかもしれない。世界って激しく変わりますね。

 恐ろしいのは、強烈な人種差別の描写に眉をひそめているだけでは済まされないところ。彼らのようなひどいことはしていないつもりだけれど、無自覚に誰かを傷つけているかもと、何だか胸がざわつくのです。リチャード・フライシャー監督、1975年公開作。(桜坂劇場・下地久美子)