沖縄振興計画どうする?仲井真元知事に聞く 「政治力とは県民全体が動く力だ」


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新たな沖縄振興の必要性について語る仲井真弘多氏=5月12日、那覇市

 沖縄県は2021年度末で期限が切れる沖縄振興特別措置法(沖振法)などに代わる新たな沖縄振興の制定を国に求めている。22年度からの新たな沖縄振興計画(振計)の素案を1日に公表し、これから国や与党関係者との交渉を本格化させる。沖縄の日本復帰から約50年。政府は沖縄に過重な基地負担を押し付け、その見返りとして振興策を展開してきた側面もある。第4次振計(2002~11年度)と、現行の第5次振計(12~21年度)の制定時、それぞれ知事を務めていた稲嶺恵一氏と仲井真弘多氏に、新たな振計の必要性や基地問題を背景とした政府との距離感、交渉などについて聞いた。 (聞き手・梅田正覚)

【稲嶺元知事のインタビューはこちら】

 Q:新たな沖縄振興の必要性は。

 「復帰から50年間、政府も国民も沖縄に対するシンパシー(共感)を持ち、保革関係なく振興に理解を示してくれた。おかげさまで沖縄はまずまずの位置に来た。しかし、この島々で構成する圏域は経済政策を展開していくにも厳しい現状がある。さらに戦争の経験、米軍基地の存在など他県と比べて非常に特殊な点もある。沖縄振興特別措置法の立法目的にある特殊事情はいまだ解消されていない」
 「それに新型コロナでガンと打撃を受けた。県経済はまだもろい。また立ち上がるのは本土の皆さんより何倍も時間を要する。今の沖縄振興計画は県が制定する仕組みで地域の問題解決に効き目がある。この仕組みも含めて延長してほしい」

 Q:10年前、第5次振計の制定の過程で新たに一括交付金制度を獲得した。

 「要請は東京の政治家に保革関係なくいろいろ回った。政治力と理屈がうまく合えば力になる。政治力とは何も国会議員の力だけではない。経済界やマスコミを含めいろいろな各界各層が団体を作って、県民全体で一斉に動く。これがものすごいパワーとなる」

 Q:沖縄は知事と政府の距離感で政策の優遇度合いが変化してきた。沖縄県知事の役割とは。

 「僕は産業振興を中心に、(県民が)ちゃんとした生活ができるようにと考えていた。県民所得が全国平均くらいないといけない。でも補助金だけでやったら駄目で『自立自尊』を目指した。今、県民は少しずつ自立自尊の精神をかみしめつつあるんじゃないか」
 「米軍基地の配備や撤去は国が決める。ちょっと僕らじゃ扱いにくい。直接基地を無くす権限は持ってはいないけど、われわれも整理縮小の環境をつくることに貢献しようと『21世紀ビジョン』に『基地のない沖縄』の文言を入れた」
 「少しずつ減っているとはいえ、基地のウエートは変わってないし、これからは米中の緊張感がより高まるだろう。国は沖縄の地域の安定は非常に重要ということを留意してほしい」

 Q:「振興と基地」のリンクについてどう考えるか。

 「(政府が)じかにリンクさせている感じはない。日本が過去に変な戦争をしたことからの配慮や、ユニバーサルサービスの観点からもある。基地がどれぐらいプラスアルファになってるのか僕はよく知らない」


 なかいま・ひろかず 1939年、大阪市生まれ。2006年、10年の県知事選で当選し、2期務めた。

<仲井真元知事インタビュー詳報>沖縄振興計画「もう一回延ばしてほしい」

第4次沖縄振興計画とは

第5次沖縄振興計画とは