沖縄振興計画どうする?稲嶺元知事に聞く「離島の問題が重要。魚より釣り竿を」


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「沖縄の応援団がいなくなってしまった」と話す稲嶺恵一氏=1日、浦添市のりゅうせき本社

 沖縄県は2021年度末で期限が切れる沖縄振興特別措置法(沖振法)などに代わる新たな沖縄振興の制定を国に求めている。22年度からの新たな沖縄振興計画(振計)の素案を1日に公表し、これから国や与党関係者との交渉を本格化させる。沖縄の日本復帰から約50年。政府は沖縄に過重な基地負担を押し付け、その見返りとして振興策を展開してきた側面もある。第4次振計(2002~11年度)と、現行の第5次振計(12~21年度)の制定時、それぞれ知事を務めていた稲嶺恵一氏と仲井真弘多氏に、新たな振計の必要性や基地問題を背景とした政府との距離感、交渉などについて聞いた。 (聞き手・梅田正覚)

【仲井真元知事のインタビューはこちら】

 Q:新たな沖縄振興の必要性について。
 「必要性はものすごくある。大きいのは離島の問題だ。沖縄の離島は広大な範囲にあり、非常に多くの住民がいる。離島の生活は高コストだ。放っておくと無人島になる。私たちは第2の尖閣を作ってはいけない。そのためには離島対策はかなり真剣にしないといけない。離島でも本島に近い生活水準にすることが重要だ」

 Q:沖縄の特殊事情には過重な基地負担もある。
 「過重な基地負担は事実だ。国防は国の問題で、全国民、各地域が等しく考えるものだ。この狭い地域の中に全国の米軍専用施設の約70%がある。『みんなでしっかり負担するべきだ』と、沖縄県としても主張していくべきだ。イデオロギーの問題ではなくて、しっかり捉えてほしいと思う」

 Q:第4次振計策定時の国との距離感は。
 「当時は沖縄のために何かしてやろうと思いのある応援団がいた。例を挙げると、(本土と沖縄の政財界でつくる)沖縄懇話会があった。沖縄でのサミット開催を決めた小渕恵三元首相は、学生の時に沖縄に来て遺骨収集をしていた。みんな根底には戦争への思いがあった。今とは全然違う。沖縄側は従来は応援団に頼っていたが、これからは頼れない。沖縄もパイプ作りを積極的にする必要がある」

 Q:当時、国との交渉でどう主張したのか。
 「魚(=補助金)はいらないから釣り竿(つりざお=制度)をくれと言った。理論の主柱となったのは琉球銀行元頭取の中山吉一氏だ。彼は沖縄は復帰後、早く本土並みになりたいと同質化を求めたが、歴史や地理的な特殊性がある沖縄に合わないのではないかと考えた。私はこの考えに賛同した。補助金をもらっても消える。釣り具がないと魚も釣れない」

 Q:政府との距離感で振興策の優遇度合いは代わる。沖縄県知事の役割とは。
 「一番大事なのは県民のために仕事をすることだ。ただ沖縄県は日本の国の一つの県だ。そこに限界がある。沖縄の主張を強く言うだけでなくいろいろなパイプを使ったり、人脈を増やしたり、日頃の付き合いをして積み重ねた上でこちら側のギリギリの主張をする。その中で落としどころを見つける。ベストな選択をしたいが実際はできない。それが県知事の限界だ。対立する場合もあるが、少なくとも長く開催されていない沖縄政策協議会を開けるような関係になっていくことが重要だ」


 いなみね・けいいち 1933年、旧満州生まれ。98年と2002年の県知事選に当選し、2期務めた。
 

<稲嶺元知事インタビュー詳報>沖縄振興「第2の尖閣を作ってはいけない」

第4次沖縄振興計画とは

第5次沖縄振興計画とは