土地規制法案「権力者にフリーハンド」 研究者が懸念「対象行為あいまい」


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土地規制法案に対し「権力者にフリーハンドを与える」と懸念する亀山統一さん=2日、琉球大

 自衛隊や米軍基地など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案に対し、県内の研究者からも懸念の声が上がっている。ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏らが代表幹事を務める「日本科学者会議」は、「違憲立法」と指摘し、幹事会で廃案要求を決議した。同会議沖縄支部事務局担当で決議文原案を練った一人、琉球大農学部助教の亀山統一さん(53)=浦添市=は「権力者にフリーハンドを与える悪法だ」と警鐘を鳴らした。

 琉球大に赴任したのは1994年。専門のマングローブ林の研究から、サンゴなど周辺環境への影響も調査してきた。研究者の立場から辺野古新基地建設、泡瀬沖合埋め立て(東部海浜開発)事業に反対してきた。同時に、自身が生活する浦添市西海岸の環境を考えようと勉強会も開催する。

 「自分も調査対象になるのか。その考えは間違っているのか。しょうがないと言えるものなのか。それさえも分からない」。亀山さんは新型コロナウイルス関連ニュースの裏で、急ピッチで進む法案審議に危機感を覚える。

 法案は、首相が自衛隊や米軍の基地など「重要施設」の敷地周囲約1キロや国境離島の区域内に「注視区域」や「特別注視区域」を指定し、区域内の土地の利用に関して調査や規制ができるようにするものだ。土地の利用方法が「機能阻害行為」と判断された場合、国の中止命令に従わなければ罰則が科される。

 ただ、土地の所有者や利用者はどこまで含まれるのか、「機能阻害行為」の対象は何かあいまいだ。亀山さんは抗議行動などが対象になりかねないと問題視する。衆院内閣委員会で質疑した自民の杉田水脈氏が辺野古新基地建設工事に対する反対運動を名指し、法の適用対象とするよう要求したことについて、政府が否定しなかったこともその理由の一つだ。

 2016年、安倍政権は米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯建設工事で、自衛隊ヘリによる重機などの資機材空輸を防衛省設置法で可能との解釈で強行、抗議する市民のテントも同法を根拠に撤去した。07年には辺野古新基地建設に伴う環境影響の事前調査で、機器設置に海自掃海母艦が投入された際も国家行政組織法に基づく「官庁間協力」という解釈で押し切った。

 亀山さんは土地規制法案でも同様に、政権による恣意(しい)的な拡大解釈を許し、国民が縛られることを懸念する。「海が好きというだけの人も対象になるのでは」。抗議行動にとどまらず、調査研究やレジャーなども対象になりかねないと指摘している。 (仲村良太)