ピアニスト辻井伸行と「沖縄の風」初演 琉響20周年サントリーホールで東京初公演


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設立20周年を記念して東京で初めて演奏する琉球交響楽団の楽団員ら=21日、東京都港区のサントリーホール(堀田力丸撮影、エイベックス・クラシックス・インターナショナル提供)

 【東京】琉球交響楽団(琉響)の創立20周年を記念した演奏会「はじめての東京公演」(エイベックス・クラシックス・インターナショナル主催)が21日、港区のサントリーホールで開かれた。東京での琉響の公演は初めて。大友直人指揮の下、沖縄の四季の風物や風習をモチーフにした「沖縄交響歳時記」(萩森英明作曲)全6楽章を初めて披露したほか、ピアニストの辻井伸行を迎え、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」を共演した。沖縄を感じる明るく華やかなメロディーに、約2千人の観客は盛大な拍手を送った。

 東京公演には楽団員をはじめ、東京を拠点に琉響で演奏経験のあるメンバーも加わった総勢69人が出演。「沖縄交響歳時記」は沖縄民謡や琉球古典音楽のフレーズを折り込み、伝統楽器である三板や島太鼓を取り入れた独自のアンサンブルで、豊かな響きからは沖縄の四季の情景が浮かび上がってくるようだった。

 辻井が琉響創立20周年を記念して作曲した「沖縄の風」(山下康介編曲)も初めて披露された。透き通った優しい音色は観客に心地良さを届けた。演奏会で辻井は曲について「沖縄には何度も訪れている。自然が豊かで人も温かい。(沖縄の)明るい感じが出ている」と説明。琉響との共演については「素晴らしいオーケストラ。心から楽しく演奏させていただき、光栄でした」と語った。

琉球交響楽団と共演するピアニストの辻井伸行(手前)(堀田力丸撮影、エイベックス・クラシックス・インターナショナル提供)

 公演後、大友は「とても充実したいいコンサートになった。今日初めて(琉響の)音を聞き、姿を見ていただき、驚かれ、演奏にも感動してくださった思う」と語った。ただ、楽団の経済基盤が脆弱(ぜいじゃく)であることから「沖縄県の文化施設として東京公演や海外公演につながっていくためには、日常の活動に対する地域の皆さんの支援なくては成り立たない」と支援を訴えた。

 東京公演は昨年4月に開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2回延期された。楽団員代表の高宮城徹夫(バイオリン)は「日本でトップのサントリーホールで、いっぱいの観客で言葉もありません」と感激した。コンサートミストレスの阿波根由紀(バイオリン)は「本当に感謝でいっぱいです。観客から『すごい』という声も聞こえた。沖縄県以外でも演奏する機会をつくっていきたい。これを一つの自信に進んでいきたい」と語った。

 琉響は2000年に「沖縄の地に本格的なプロのオーケストラをつくり育てたい」との思いで、元NHK交響楽団(N響)の首席トランペット奏者で県立芸術大学教授だった故祖堅方正らが中心になり設立された。8月28日には浦添市のアイム・ユニバースてだこホール大ホールで特別公演を行う。 (問山栄恵)