思い出詰まった小学校の登り窯、復活へ 陶芸家と協力、交流の場に 東村・高江


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
窯から作品を取り出した高江小中学校の児童生徒と職員ら=2014年、東村立高江小中学校

 【東】東村高江小学校のグラウンド横に現在使われていない登り窯がある。陶芸家の森貴(あつ)希(き)さん(40)や地域住民らが、窯を復活させる取り組みを始めている。やちむんを活用した地域活性化にも期待の声が上がる。県内の小学校に登り窯があるのは同校のみとみられるが、2017年以降使用されていない。

 高江小中学校(当時)に本格的な登り窯が造られたのは1980年ごろ。同校で当時美術教諭をしていた比嘉敏夫さん(84)らが造成に向け奔走。比嘉さんは「土は一つの生命の源。子どもたちが土に親しむ教育が大切だ」と当時の思いを語る。「授業の合間を縫って取り組んだ。自分で土や木をもらいに行ったりした」と振り返った。その後、同校に赴任した知花博康さん(85)らが修復や改良を重ねていった。陶芸教室も開かれるようになる。
 登り窯には、高江区民の思い出が詰まっている。火入れの際は、子どもから高齢者まで地域住民が集まり、陶芸家の指導の下、コップや皿、シーサーづくりなどに取り組んだ。

 同校図書館司書の盛若奈さん(31)は「大人たちが交代でまきをくべて一晩中、火を見守ってる姿を鮮明に覚えている」と懐かしそうに語った。当時を知る同区の喜友名サヨさんは「いろんな作品が生まれた。中には『名人』と呼ばれる人もいた」と当時を振り返り笑った。

窯を修復する森貴希さん=6月14日、東村高江

 近年、少子化が進み陶芸教室の開催も減少。2017年に高江中学校が閉校してからは使用されなくなった。登り窯を復活させようと、区民で保護者の荘司剛さん(42)と宮城達也校長らが陶芸家を探したところ、森さんにたどり着いた。読谷村のやちむん工房で修行していた森さんは、ちょうど独立後の活動拠点を探していた。今年4月、森さんは家族4人と移住した。

 森さんは窯の修復や土の取れる場所を探すなど復活に向け奔走している。村教育委員会も修復費用を支援。當山全伸村長は「支援していきたい。地域活性化の拠点になってほしい」と登り窯再生に期待を寄せた。

 森さんは「学校に工房ができるとは思わなかった。子どもたちがやちむんに触れる機会をつくりたい。地域の人々が交流できる場になればうれしい」と意気込んだ。今年8月までの修復を目指している。9月には子どもたちを対象にした陶芸教室を開催する予定。