〈74〉肝疾患死亡率 日本一 自己管理で防ごう


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 みなさまは肝臓という臓器をご存じでしょうか?

 また沖縄県では肝臓の病気(肝疾患)で亡くなる方が日本一多いということをご存じでしょうか?

 沖縄県の肝疾患死亡率は、2015年の調査で10万人当たり男性18.7人(1位)、女性6.0人(1位)で、全国の男性9.8人、女性3.5人を大きく上まわり、10年の前回調査から悪化しています。全国的には死亡率が低下しているのと対照的です。また働き盛りの壮年期に肝疾患で亡くなる方が多いのも特徴で問題です。

 肝臓はおなかの中にあるとても大事な臓器で(1)栄養の貯蔵(2)老廃物の解毒(3)消化液の産生などを行っており肝臓が元気でなくては生命を維持できません。

 肝臓にダメージを与える原因は、2018年のデータでは、沖縄県以外(1)C型肝炎(48.2%)、(2)アルコール(19.9%)、(3)B型肝炎(11.5%)、(4)脂肪肝(6.3%)で、沖縄県(1)アルコール(51.9%)、(2)脂肪肝(13.3%)、(3)C型肝炎(11.8%)、(4)B型肝炎(3.5%)です。

 B型、C型肝炎はウィルス感染により肝臓が弱ってしまう疾患です。しかし、沖縄県の特徴はアルコール、脂肪肝(栄養過多)による肝臓へのダメージが多く、その原因は明白です。肝臓にダメージを与え続けると肝臓は次第に硬くなり(肝硬変)、機能を失い、進行すると肝不全となり生命を維持できなくなります。また、正常肝に比べて高率に肝がんが発生し、これも命を奪う原因となります。

 身に覚えがあり、体調がすぐれなければ肝臓が原因かもしれません。医療機関で相談してみてください。健康診断などで客観的に評価してみるのもよいと思います。

 ウィルス性肝炎の治療進歩は目覚ましく、高率にウィルスを排除、または抑えられるようになっています。B型、C型肝炎と言われたことがある方も医療機関で再度相談してみてください。

 肝がんができた場合も早期であれば、低侵襲な治療や手術が選択可能となっています。沖縄県の肝疾患の多くの原因は明白で自己管理で防ぐことができます。

 肝疾患で亡くなる方が日本一多いという不名誉な記録を皆で改善していきましょう。

(伊禮俊充、浦添総合病院.肝胆膵外科)