【記者解説】辺野古サンゴ移植強行 自然保護を無視の拙速な作業


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埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=名護市辺野古

 沖縄防衛局が29日に開始したサンゴ移植は、県が付した条件をほごにした上、自然保護の観点を無視した拙速な作業だと言える。海水温が上昇する中での移植は、移植先での生残率が下がることが、防衛省がこれまで実施してきたサンゴ移植の結果でも明らかだ。

 沖縄防衛局は県の許可条件は適切に守られていると説明しているが、移植が可能だとした判断の根拠は明確にしていない。少なくとも、県側は作業の着手を「不適切」(県幹部)と捉える。作業を強行することで基地建設に向けた既成事実を着々と積み重ねる国の狙いが透けて見える。

 県が今回のサンゴ移植の許可を出す上で順守するよう求めた「県サンゴ移植マニュアル」も移植時期は高水温期や台風・繁殖期などを避けた「秋季が適当」と定めている。作業着手は県の許可処分の条件となったマニュアルに違反している可能性が高い。

 同マニュアルの引用論文を書き、サンゴ研究を続けてきた大久保奈弥東京経済大准教授(生物学)は「サンゴ類は海水温が30度以上になると白化現象が進みやすくなる。移植には適さない時期だ」と指摘した。

 新基地建設では2018年7月27日~8月4日の間に移植したハマサンゴ9群体中5群体が死滅している。高温期がサンゴ移植に適さないことは、新基地建設工事の中でも証明されている。一方、県は28日の移植許可表明の会見で、埋め立て予定区域の地盤改良工事など設計変更承認を不承認にした場合、サンゴ移植許可の取り消しの可能性にも言及した。国は県の不承認の判断を下す前に作業を強行し、既成事実化を図った格好になる。

 沖縄防衛局は県の問い合わせに「条件は適切に守られている」と説明した。サンゴの生残率を下げる可能性が高い夏季のサンゴ移植実施について、国は説明責任を果たす必要がある。

(塚崎昇平)