まるでバニラやカラメルのよう…泡盛の香りが増す伝統的育成法「仕次ぎ」とは


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泡盛の仕次ぎによる効用について研究した沖縄国税事務所の相澤常滋主任鑑定官=25日、那覇市の沖縄国税事務所

 沖縄国税事務所の相澤常滋主任鑑定官らが、泡盛の伝統的な古酒育成方法として知られる「仕次ぎ」の効用について研究し、仕次ぎした古酒は仕次ぎせずに甕(かめ)で貯蔵した古酒に比べて、バニラなどの香味特性が強い傾向があることを明らかにした。

 泡盛の「仕次ぎ」は、沖縄で昔から伝わる古酒の育成方法で、複数の甕に製造年の違う泡盛を貯蔵し、貯蔵年数の最も長い古酒を飲んだ後に、2番目以降の甕から順についでいく。相澤氏は「消費者が、酒の熟成に手を入れて関わっていく点で、沖縄独自の文化と言える」と話す。

 相澤氏と、前沖縄国税事務所鑑定官の宮本宗周氏が研究した。過去3回実施された「泡盛仕次古酒・秘蔵酒コンクール」に出品された古酒を対象に、専門家の利き酒による評価結果をまとめた。

 仕次ぎされた古酒は、仕次ぎせず貯蔵された古酒に比べ、バニラや、砂糖を焦がしたような「カラメル様」、ドライフルーツなどの香味特性が強い傾向があった。一方で、貯蔵年数が長くなっても特性が強まることはなく、単純に長期間貯蔵するだけでは古酒の香味特性は強くならないという。仕次ぎしていない古酒について、甕貯蔵と瓶貯蔵を比較すると、甕貯蔵は刺激感が低くなり、「カラメル様」の特性が強くなる傾向があったという。

 研究論文は、酒類製造の学術誌「日本醸造学会誌」の7月号に掲載された。相澤氏は「これまで、消費者が育てた仕次ぎ泡盛に触れる機会は少なかった。今回の研究は仕次ぎの結果を比較しているという意味で、世界で初めてだと思う。今後も仕次ぎの効果を深掘りしていきたい」と話した。