【記者解説】辺野古抗告訴訟、審理対象適格性が争点に


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辺野古抗告訴訟の控訴審第一回口頭弁論で意見陳述するため、福岡高裁那覇支部に入る玉城デニー知事(右)や弁護団ら=26日午後2時39分、那覇市

 名護市辺野古の新基地建設を巡る県と国の抗告訴訟控訴審は、即日結審した。昨年11月の那覇地裁判決は、県が問い掛けた国土交通相裁決の中身に触れず、訴えを入り口で退けており、控訴審では県の訴えが裁判所の審理対象となるかどうかが判断の中心となる。

 県が司法の判断を求めているのは、県の埋め立て承認撤回への、国による対抗策だ。沖縄防衛局は、本来は国民の権利救済を図るためにある行政不服審査制度を使い、審査請求を申し立て、国交相は県の承認撤回を取り消す裁決を下した。

 こうした国の手法が適法なのかどうかを問うため、県は国を提訴。国交相裁決が違法であり、取り消されるべきだと主張する。だが一審判決は、県の訴えが裁判所の審理対象にならないとして門前払いした。県側は控訴理由書で「法律上の争訟の意義などの解釈を誤り、司法の果たすべき役割を放棄した」などと一審判決を批判。県の訴えは裁判所の審理対象で、原告としての適格もあるとしている。

 国交相裁決が違法だとして取り消しの判断がされれば、県の承認撤回の効力が復活する。埋め立て工事への影響は大きい。

 ただ、県の訴えが裁判の対象になると控訴審で認められ、入り口を突破したとしても、福岡高裁那覇支部がすぐに国交相裁決の中身を判断するわけではない。那覇地裁に差し戻され、再び審理する形となる。撤回の効力復活にはいくつもの高いハードルがあり、県にとって厳しい道が続く。
 (前森智香子)