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この子は単独では商品化は無理と思っても… 石川由美子<仕事の余白>


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石川由美子氏

 泡盛は3年以上熟成させると「古酒」と表現できる。5年、10年、20年と熟成が進むと甘く柔らかな口当たりに変化しとても飲みやすくなる。そのままの年数でも十分美味(おい)しいが、酒質の異なる古酒を合わせて味を変化させるブレンドは、合わせる古酒同士の欠点を補い美点に変えたり、お互いの長所をより一層引き立てられたりと自分で味を作り出すことができる。

 年月をかけて古酒の味を変化させる熟成古酒は、お酒が持つポテンシャルによるため見守ることしかできないが、時間が作り出す味にはロマンがある。一方、お酒の特徴を見いだし自分なりに味を造り上げていくブレンドは、達成感もあり面白い。

 しかしながらブレンドは合わせるだけの作業ではない。お酒にはそれぞれ相性があり、凸と凹で合うだろうと思ったお酒が欠点だけを強調したり、合わないと思っていたお酒同士の組み合わせですごく美味しくなったりと、頭の中の設計図通りにいかないことの方が多い。でも“この子は単独では商品化は無理だろう”と思う古酒が、ブレンドによって美味しいお酒に変化した時は心の中でガッツポーズが出るくらいとてもうれしい。泡盛をブレンドできる仕事に就けたことはとても幸せである。これからも美味しい古酒を自分で造り上げていきたい。

 今回コラムのお仕事を通じ、いろいろな方から応援をいただくことができた。良い経験ができたことに感謝し、これからも精進していきたい。