実習生と地域をつなぐTシャツ ベトナム語をプリント 指さしで会話円滑に


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
ミニポスターを手にする水嶋健さん(右)と朝戸俊行医師=8月日、鹿児島県和泊町の朝戸医院

 【沖永良部】ベトナム人技能実習生と地域住民とのコミュニケーションをサポートする目的で作られたTシャツ「GINO―T(ギノティ)」と、同様のデザインを印刷したポスターが話題を呼んでいる。コミカルなイラストに日本語とベトナム語訳、さらにベトナム語の発音(カタカナ表記)が併記された単語一覧表となっている。言葉が分からなくても、イラストを指さすことで相手に意思を伝えることができるツールだ。

 イラストは「~してください」「~ですか?」といった基本フレーズや、「並べる」「運ぶ」「休む」など職場で使うことを想定した単語などと組み合わせている。111通りが完成しており、Tシャツに17通り、用語ポスターには100通りがプリントされている。

 ギノティを企画開発したのは、8年間ベトナムで暮らした経験を持つ合同会社オトナキ代表の水嶋健さん(37)=和泊町。外国人技能実習制度の下で日本に渡ったベトナム人実習生が、失踪、過労死、自死に追い込まれてしまう事例が絶えない現状に心を痛め、何かできないかと立ち上がった。

「GINO-T(ギノティ)」(基本)にはさまざまな業種に対応した用語がプリントされている

 現在、沖永良部島では100人前後のベトナム人技能実習生が花き栽培農家などの事業所で雇用されているが、過去には実習生の失踪が相次いだこともあった。若手農家団体が交流会を催してコミュニケーションの場創出に動き出しており、ギノティやポスターが島の人とベトナム人実習生の相互理解の一助となることが期待されている。

 水嶋さんは8月16日、町内にある朝戸医院を訪問した。診察室に掲示されているポスターの縮小版ミニポスターを寄贈した。受け取った朝戸俊行医師は「診察に来たベトナム人実習生とポスターを使って少しやり取りができた。このツールがあることで彼らに対してウエルカムであることが伝えられる」と笑顔で話した。

 水嶋さんは「沖永良部島が多文化共生の一つの成功モデルになればうれしい。実習生をはじめとする外国人にも地域住人としての居場所をつくっていきたい」と語った。Tシャツやポスターはオンラインショップ(https://gino-t.shop/)でも購入ができる。  (宮澤夕加里通信員)