【深掘り】自民総裁に岸田氏 沖縄政策どうなる?衆院沖縄1区への影響は?


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自民党総裁選を終え開かれた両院議員総会で、あいさつする岸田新総裁=29日、東京

 岸田文雄氏が自民党総裁に選出され、10月4日の臨時国会で新首相に指名される運びとなった。岸田氏は、外相や沖縄担当相として基地問題や沖縄振興などに関わってきた。当選後のあいさつで自身の「聞く力」を強調。「強引」との批判も浴びた安倍晋三、菅義偉両政権との違いをにじませた。一方で、米軍普天間飛行場の移設問題では推進の立場を崩さず、沖縄の過重な基地負担の解消に向けて大きな状況の変化は見込めない見通しだ。

 新政権誕生が次期衆院選の情勢に影響を及ぼすとの見方も強く、下地幹郎氏=無所属=の復党問題がくすぶる沖縄1区など県内政局への影響も指摘されている。

 「しっかり聞く」

 「岸田文雄の特技は、人の話をしっかり聞くということだ」。岸田氏は29日、新総裁に選出された直後のあいさつで、自身の融和的な政治姿勢をアピールした。経済政策では「成長と分配の好循環を実現する」とし、自身が掲げる「新自由主義的な政策からの転換」を強調した。

 岸田氏は、2007年の第1次安倍改造内閣で沖縄担当相に就任。退任後は、沖縄を支援する自民議員でつくる「美ら島議員連盟」を立ち上げ、会長を2度務めた。沖縄振興策を話し合う党の「沖縄振興調査会」の会合にも参加。6月の本紙インタビューでは、来年で日本復帰50年を迎える沖縄の新たな振興策について、第3次産業に頼った産業構造や「子どもの貧困」の克服を課題に挙げつつ、「民間の投資をしっかり呼び込んでいく」と意欲を示していた。

 中央政界では「地元後援会もあり、沖縄に特に理解のある議員の一人だ」(自民党中堅議員)と評され、県内の自民党関係者からも「沖縄政策に詳しく、思い入れもある。予算が一気に上がることまではないが、振興策の確保に向けた交渉はしやすくなるだろう」と期待の声が上がる。

 強行

 その一方で、安倍政権下で務めた外相、防衛相時代には、閣僚の一人として辺野古への移設強行を推し進めた経緯もある。

 当選後の会見でも、安倍政権が提唱した、中国の台頭を念頭にした「自由で開かれたインド太平洋」の実現に意欲を示すなど、安倍・菅政権の防衛政策を踏襲する見込みだ。

 日米地位協定の抜本改定にも踏み込まない考えを明らかにしており、辺野古問題などに対する従来の強行姿勢は「変わらない」との見方が県内で広がる。県幹部の一人は「自民党として辺野古移設推進の姿勢は変わらないだろう。県としては粘り強く取り組むしかない」と指摘。新内閣発足後、会談を申し入れる見通しだ。

 沖縄1区

 岸田氏の総裁選勝利に伴う新政権誕生は、間近に迫った衆院選への思惑が絡み、情勢の変化をもたらしそうだ。

 岸田氏について、「線が細い」(県連関係者)など「選挙の顔」になるか疑問視する向きもあるが、岸田派の国場幸之助氏(1区)、岸田氏の推薦人になった西銘恒三郎氏(4区)への追い風になるとの歓迎ムードも漂う。

 国場氏に近い岸田氏の総裁就任で、次期衆院選に1区からの出馬を予定する下地氏の自民党復党が進展する道が途絶えたとの見方も強い。下地氏側は復党に向けた県連との協議の足掛かりにしようと、衆院当選同期である河野氏の支持を打ち出していたが、狙いが外れた格好だ。

 下地氏に近い関係者は、「戦略の見直しが必要になる」と危機感を募らせる。

 一方、派閥相乗りになった形で勝利をつかんだ岸田氏にとって国場氏だけを優遇する環境にはないとの見解を示した上で、「自民にとって岸田氏は河野氏に比べて選挙の顔としては弱い。選挙が近づくにつれて、自民側は1~4区まで保守がまとまる必要性に迫られる」と、進展がない自民県連との協議のきっかけになり得るとみて今後の展開に望みをつないだ。
 (安里洋輔、明真南斗、大嶺雅俊)

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