10月2日は豆腐の日 新基準であちこーこー島豆腐受難 対応苦慮する業界


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夕飯用に島豆腐を買い求める女性。「あちこーこーが買える日はうれしい」=1日、サンエー那覇メインプレイス

 10月2日は語呂合わせで「豆腐の日」。栄養価が高く価格も手ごろな豆腐は煮て良し、焼いて良しの万能食。なかでも出来たて“あちこーこー(熱々)”の島豆腐、ゆし豆腐は沖縄独自の食文化だが、6月から義務化された国際的な衛生管理基準「HACCP(ハサップ)」により、店頭に並ぶ時間は大幅に短くなった。温度管理の難しさや業務負担の増加を理由に、温かい豆腐の販売をやめた業者も出ているのが現状だ。沖縄の伝統的な食文化をどうにか守りたい―。豆腐業者からは切実な声が上がる。

 ハサップの適用で、スーパーなどに熱々の豆腐を卸す製造業者は、55度以上が保たれているかを確認した上で店舗に納品する。店頭での販売は納品から3時間以内とし、時間内に売れなかった商品は撤去されるためフードロスにもつながっている。

 宜野湾市野嵩に製造所を構える宮城食品は、5人で製造から配達までをこなす。澤井大輔代表は「6月以降、納品前に温度を計ったり温度が下がる前に急ピッチで配送したりと、とにかく業務が増えた」とため息をつく。食の安全のためと新基準に理解を示すものの「人手が限られる小規模業者にとって負担は大きい。今後も続けられるのか不安は尽きない」と吐露した。

 本島南部を中心に約80カ所に卸すなかむら食品は、廃棄品を出さないよう生産量を約半分に減らした。製造販売担当の上地勇さんは「買い物客が多い時間帯を考慮して納品するが、『タイミングが合わず買えなかった』という消費者の声も増えた」と指摘する。その上で「売り手、買い手双方にとって満足できる仕組みが何かないものか」と頭を抱える。

「支援策を模索していきたい」と話す久高将勝理事長=9月28日、那覇市の県豆腐油揚商工組合事務所

 県豆腐油揚商工組合の久高将勝理事長は、販売基準を守りながら少しでも長い時間販売できるよう「あちこーこー豆腐保存プロジェクト」を進めている。クラウドファンディングで資金を集め、店着時温度の維持のための保温材配布など、製造業者に対する支援事業を展開する方針だ。「沖縄の大切な食文化を守りたい。県民にもたくさん食べて応援してもらいたい」と呼び掛けた。

 (当銘千絵)