【記者解説】衆院選で「オール沖縄」が苦戦した理由 今後の沖縄に与える影響


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支持者らと選挙結果を待つ屋良朝博氏(中央)。辺野古を抱える3区で自民の島尻安伊子氏に敗れた=31日午後10時11分、沖縄市知花の選対本部

 31日に投開票された衆院選で、沖縄の4選挙区は、玉城デニー県政を支える「オール沖縄」勢力の2勝、自民の2勝となった。「オール沖縄」が小選挙区の議席を一つ減らし、玉城知事に対して厳しい審判を県民が下した。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題など、県政運営に大きな影響を与える見通しだ。一方、自民は名護市のある沖縄3区の議席を奪還し、今後の選挙にも弾みをつけたい考えだ。選挙結果は来年の名護市長選や県知事選に波及するとみられ、県政与党は立て直しを迫られることになる。

 県内4選挙区は「オール沖縄」勢力と自民が2勝ずつで、議席を分け合った。ただ、玉城デニー知事を支えるオール沖縄としては改選前から1議席減らし、玉城デニー県政には厳しい結果となった。新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んだ県経済や県民生活の立て直しが喫緊の課題となる中で、オール沖縄側は米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古新基地建設を対立軸として争点化することが十分にできなかった。

 全国的に「自民1強」への批判が強かった選挙戦で、野党共闘を組むオール沖縄も政権交代による新基地建設計画の中止を訴えたが、“風頼み”となった面が否めず、組織力の低下を浮き彫りにした。

 新基地建設問題に反対する県民の民意を前面にして政府と対峙(たいじ)してきた玉城県政にとって、名護市を選挙区に抱える沖縄3区で敗れた結果は大きな痛手となる。県は沖縄防衛局が提出した軟弱地盤の改良工事に向けた「設計変更」を不承認とする方向で調整を進めている。選挙結果を受け、玉城知事の判断時期に影響を与える可能性もある。

 沖縄4選挙区で自民候補が得票を伸ばす傾向となったものの、全国的には9年間続いた安倍、菅政権への批判や後手に回った政府のコロナ対策などで、自民も危機感が強い選挙戦だった。岸田文雄首相は慎重な政権運営が迫られそうだ。

 安倍、菅政権では、辺野古新基地に反対するオール沖縄の県政に対する“冷遇”が際立ってきた。新政権は今後どのような姿勢で玉城県政に対応するのか、総選挙後の焦点となる。

 沖縄は来年2022年に選挙イヤーを迎え、1月の名護市長選を皮切りに、参院選、秋の県知事選など一大決戦を迎える。小選挙区の議席を伸ばした自民は県政奪還を最大の目標に攻勢を強める構えだ。オール沖縄側は保守勢力離れもあり、体制の立て直しが迫られることになる。

 来年は沖縄の日本復帰50年の節目でもあり、県選出・出身議員は新たな沖縄振興計画の策定や予算折衝など、将来の沖縄像を描く職務を国政で担うことになる。政党間の枠組みを超え、県民の意見を反映した議会活動が求められる。
 (池田哲平)

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