豪州へ渡ったウチナーンチュ…真珠ダイバーの軌跡、日本語版を出版 本部町と体験者に寄贈


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 【本部】1910~60年代にオーストラリアに渡り、真珠貝漁業のダイバーとして活躍した沖縄の人々の軌跡をまとめた書籍「豪州へ渡ったウチナーンチュ」の日本語版がこのほど沖縄教販から出版された。出版に携わった豊見山和美さん、町田新吾さんらが10月25日、豪州の真珠ダイバーを多数輩出した本部町を訪ね本を寄贈した。平良武康町長や、20代の頃に豪州で真珠ダイバーとして働いた新川宣秀さん(88)=同町健堅=らに手渡した。

書籍「豪州へ渡ったウチナーンチュ」を寄贈した豊見山和美さん(左から2人目)、町田新吾さん(左端)と、寄贈を受けた元真珠ダイバーの新川宣秀さん(右から3人目)、平良武康町長(同2人目)ら=10月25日、本部町役場

 「豪州へ渡ったウチナーンチュ」は、同国出身の作家ジョン・ラムさんが文献や体験者の証言を基に執筆。豪州かりゆし会会長の飯島浩樹さんが翻訳し、豊見山さんらが協力した。沖縄出身者が豪州に渡ることになった社会背景や、過酷な仕事の様子、ダイバーの氏名・出身地一覧、顔写真などが紹介されている。

 真珠ダイバーは県内各地から渡豪した。新川さんは20代だった58年、沖縄から渡豪した162人の1人。父の宣達さんと共に豪州北部の木曜島で約1年間働いた。2017年にラムさんの取材を受けた。

 新川さんは当時の様子を「沖縄の海とは潮流が違う。潜水は深くて水深50メートル。空気が届かなくなり、慌てて海面に上昇して間一髪で助かったこともある。潜りながら考えたのは、沖縄の母や祖父母のこと。今思うと外国でよく頑張った」と振り返った。本を手に「友達や親戚に読んでほしい」と笑顔を見せた。

「豪州へ渡ったウチナーンチュ」日本語版の表紙

 豊見山さんらは「豪州に移民したウチナーンチュが多数いたことは知られていない。本を手に取って、顔写真などで知人を探してみてほしい」と語った。平良町長は「本をきっかけに、町民にも豪州との関わりを伝えたい」と応じた。

 同著はA4判で全131ページ。税込み2420円。問い合わせは(電話)098(868)4170沖縄教販へ。