空手の世界選手権が16日、ドバイで開幕する。東京五輪男子個人形金メダリストの喜友名諒(31)=沖縄県・興南高―沖縄国際大出、劉衛流龍鳳会=が、同種目で前人未到の4連覇に挑む。達成すれば、師事する佐久本嗣男氏の3連覇を超える快挙となる。「オリンピックよりもさらに進化した空手で勝負したい」と力強く決意を語る絶対王者に、死角はない。
出発を3日後に控えた9日、那覇市内の道場には気迫のこもった表情で稽古に臨む喜友名の姿があった。汗だくになりながら、鏡を前に一つ一つの動作を繰り返し確認する。東京五輪後では初の国際大会となる世界選手権。「もともとオリンピックの後に世界大会を見据えていたから、気持ちが切れることはなかった」と高いモチベーションを保っている。
五輪が終わってから改善に取り組んできたのは技の「しなり」だ。突き技を繰り出した時に手首のスナップを効かせるなど、細かい動きをさらに突き詰めてきた。「スピード、力強さ、しなやかさが自分の強み。劉衛流の形の特徴を今まで通りに出していきたい。それを信じてやれば優勝できる」と確固たる自信をうかがわせる。
4連覇を達成すれば、佐久本氏に並んでいる最多連続優勝記録を塗り替えることになるが、「普段から連覇や記録は意識していない。大会で思い切り戦うことだけを考えている」と気負いはない。「回数では超えることになるけど、まだまだ(空手家として)佐久本先生を超えることはできない。もっと自分を磨いていく」と足元を見詰める。
一方の師は「ぜひ自分を超えてほしい」と望む。「今年は五輪の金メダル、県民栄誉賞、紫綬褒章を頂いた。全て彼が努力した結果。指導者冥利(みょうり)に尽きる」と目を細める。その上で、世界選手権に向け「やってきたことにさらに磨きを掛けた。負ける要因はない」と断言する。
9月にあった代表選考会では、上村拓也、金城新と共に出場した団体形の代表権は逃した。団体形でも世界選手権を2連覇中だっただけに喜友名は「本当に悔しい」と唇をかむ。「団体で戦うつもりで形を打つ」と、日々切磋琢磨(せっさたくま)する2人の思いも技に乗せて戦う決意だ。
喜友名が出場する男子個人形は18日に予選、20日に決勝が行われる。(長嶺真輝)