気候変動問題論じた『人新世の「資本論」』 著者・斎藤幸平さんに聞く 持続可能な沖縄観光模索を


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オンラインで取材に応じる斎藤幸平さん=東京

 【東京】気候変動問題の解決策を思想家マルクスの新解釈で論じた経済書『人新世(ひとしんせい)の「資本論」』(集英社新書)が話題だ。来年、日本復帰50年を迎える沖縄でも深刻化している格差の問題にも斬り込んだ同書は、昨年9月からの累計発行部数が30万部を超え、県内では、ジュンク堂書店那覇店で10月までの1年間の売り上げ部数が新書部門で3位に。「学術系新書としては異例の売れ行き」(森本浩平店長)という。筆者の斎藤幸平・大阪市立大学大学院准教授(34)に「子どもの貧困」をはじめとする沖縄の諸問題についてオンラインで話を聞いた。

 表題の「人新世」は、「地質学の概念。地球上のあらゆる地層に人類が介入した時代を示している」という。その弊害が気候変動であるとし「資本主義の進展で定着した大量生産・大量消費型の生活様式は気候変動のみならず格差ももたらした」と分析した。

 沖縄について、在日米軍施設の70%以上が集中する現状を挙げ「先進国の中で途上国の役割を押しつけられている地域だ」と指摘。半世紀にわたる沖縄振興策には「持続可能ではない。国からの補助金に依存し、いわゆる『箱物』を整備していくようなこれまで通りの振興策では気候変動を止めることはできない」との見方を示した。

 観光業が主要産業になっている沖縄の経済構造についてスペイン・バルセロナと重ね合わせ、入域観光客の増加によって地域住民の生活が脅かされる「オーバー・ツーリズム」の問題に直面した点を「沖縄と共通する」とした。

 バルセロナでは2015年に社会活動家のアダ・クラウさんが市長に就き、非営利の公営電力供給会社を立ち上げるなどの改革を進めた。

 沖縄でも「地域の住民のための街作りを打ち出していくビジョンが政治家からも市民からも出てくる必要がある」と指摘し、「自然や文化を守るための規制を掛けるなど持続可能な観光スタイルを模索するべきだ」と力を込めた。 (安里洋輔)

>>インタビュー全文「沖縄は東京にずっと利用されてきた」