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ビーチのごみが拾えない、その理由は… JTA代表取締役社長・青木紀将<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「ストップ、ストップ。これ以上は拾わないで」。西表島でビーチクリーン開始後わずか30分でスタッフにそう言われ、手を止めた。エメラルドグリーンの海に続く眩(まぶ)しいほどの白砂には、まだまだ大量の漂流ゴミが散乱している。「なぜ」と問うと、漂流ゴミのほとんどのペットボトル(プラスチック)が島内では処理できず、石垣島へ船で輸送するため回収量を制限せざるを得ないと言う。生態系への影響が懸念されるゴミを目の前に、愕然(がくぜん)たる想いで島を後にした。

 今年7月、沖縄島北部と西表島が奄美大島と徳之島とともに世界自然遺産に登録された。先人たちが守り育んできたやんばると西表島の生物多様性に富んだエリアが、世界の宝として認められた。と同時に、私たちはこの遺産を守り後世に残す責務を負った。

 国内の先行登録地4地域をみると希少生物のロードキル対策や密猟・密輸対策など課題が残る。観光客を含め訪れる人に対する事前の環境学習など啓発活動の重要性を訴えたい。島の成り立ちや営み、そこに棲む固有の生態系、人々のくらしなどを旅前に学び、地域への理解を深めると、旅中の配慮ある行動、また旅後は地域とのつながりを通じ想いが深まり、再訪へとつながる。私も先の西表島の海岸が頭から離れない。環境保全と観光振興の両立を図る「新しい観光のかたち」を地域の皆さまと共に考え、大切な世界の宝を守っていきたい。