【深掘り】ミサイル弾薬宮古搬入 公道使った経路非公表 市長「許可」や知事「理解」に批判も


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海上自衛隊の輸送艦「しもきた」から下船する、ミサイル弾薬などを積んだとみられるトラック=14日午前8時50分すぎ、宮古島市の平良港下崎ふ頭

 防衛省、陸上自衛隊は14日、地対艦、地対空ミサイルの弾薬を宮古島市に本格的に搬入した。南西諸島を重視する防衛体制づくりの一環だ。自衛隊と米軍が一体化し、中国に対抗する狙いがある。弾薬搭載車両が公道を走るという危険を伴う作業だったが、陸自は事前に輸送経路や弾薬の量など詳細を住民らに明かさず、宮古島市にも公表しないよう求めていた。

 自衛隊は2019年に宮古島市で駐屯地を開設し、その後ミサイル部隊を発足させたが、弾薬を保管できていない状況だった。防衛省関係者は「発射機はあるのに、弾がないのは不自然」と搬入を急いだ理由を説明した。

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弾薬の搬入を阻止するために抗議する市民=14日午前10時58分、宮古島市平良の平良港

 ■生活圏に影響

 自衛隊は尖閣諸島に近い海域を含め、沖縄周辺で米軍との合同訓練を重ねる。米軍も参加する19日からの自衛隊統合演習では、県内の民間港を使う予定だ。日米の軍事協力の流れが、住民の生活圏に影響を及ぼしている。

 今回の宮古島への搬入も民間港を使い、弾薬を載せた陸自の車両15台が公道を通過した。周囲には大型スーパーや飲食店、住宅が並ぶ。防衛省は事前に経路を尋ねた本紙の取材に「警備上の観点から公表できない」と説明していた。

 今後、生活圏と隣り合う形でミサイルの弾薬が保管されることになる。災害など緊急時にどう避難するのか、有事になった際、どう住民を守るのか。防衛省はその具体策を示さず、自治体任せだ。

 ■「やむを得ない」

 座喜味一幸市長は「住民の合意形成のないミサイル配備については反対する」と市長選で掲げて配備に反対する革新層を取り込み、保革共闘で1月に初当選した。

 だが今回、「法令に照らしてやむを得ない」として平良港の使用を許可。安全性が担保されないままでの事実上の「配備容認」に、市民の中で不信感が強まっている。

 座喜味市長は8月に港の使用を拒否した際、根本的な問題ではなく、新型コロナウイルス感染拡大防止を理由にした。裏を返せば感染拡大の懸念が払しょくされれば認めるとも取れた。自衛隊は、新型コロナに関する県の独自措置が解除された11月1日、すぐに港の使用を申請した。

 8日、市役所市長室に駆け付けた「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の仲里成繁代表は「市民と約束したじゃないか」と詰め寄った。「やむを得ない」と繰り返す市長に対し、「最初から許可するつもりだったのか。市民への重大な裏切り行為だ」と切り捨てた。

 ■声明

 「目を覚ましてください」。搬入に先立って12日に県庁前で開かれた抗議集会。マイクを握った沖縄平和運動センターの山城博治顧問は「オール沖縄」勢力や玉城デニー知事を名指しし、不満をぶちまけた。

 「こういう時に(玉城知事から)コメントがない。自衛隊だろうが米軍だろうが、沖縄を戦場にさせないと声を上げてほしい」

 玉城知事を支える県政与党は辺野古新基地反対で一致しており、辺野古以外の米軍基地や自衛隊配備についてさまざまな立場を取る。「オール沖縄」の理念の下に、辺野古以外の問題については踏み込んで議論できていないのが実情だ。

 玉城知事は14日、搬入を受けて声明を出したが、搬入を批判したり問題視したりするような文言はなく、今後、波紋を呼びそうだ。

 (明真南斗、佐野真慈、知念征尚)


 

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