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フライブルグ…修行生活始まりの街 ヘリオス酒造ヘッドブルワー・松田あゆみ<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 フライブルグ・イム・ブライスガウ―。スイスとフランスの国境近くにあり、黒い森の入り口に位置するドイツ南西部の街、私の修行生活の始まりの地だ。

 「美味(おい)しいビールはどこで飲めるのか」。私がこの街に着いて最初に調べたことだった。中央駅からトラムと呼ばれる路面電車に乗り十数分、大きな湖畔のビアガーデン。後のドイツ生活で通常サイズとなる1リットルジョッキに出合ったのもそこだった。

 しかしビールばかり飲んでいるわけにいかない。翌日には語学学校でクラス分けテストを受けた。東京である程度のドイツ語しか勉強してこなかった私は、問題用紙を見て愕然(がくぜん)とした。案の定、数字やアルファベットの読み方から始まる初心者クラスに席をもらった。

 二十人程の生徒の内、日本人は私だけでアジアからは台湾の女の子が1人。後は全てヨーロッパ各地からだった。このヨーロッパ勢がまぁすごい。とにかくどんどん発言しようと試みるのだ。頭で言いたいことを確認してから発言していた私は、いつも後れを取っていた。彼らの上達が早いのはこの精神が故だろう。

 残り1カ月で日本に帰るという冬の初め、学校の寮でドイツ人に「そんなにビールが好きならバイエルン州で勉強してみたらどうだ」と、学校の名前を教科書の表紙裏に書いてもらった。この時はまだ自分が日本に帰らず新天地ミュンヘンに行くことになるとは思ってもみなかった。