沖縄は来年、重要選挙が相次ぐ「選挙イヤー」を迎える。その皮切りとなる来年1月23日投開票の名護市長選は、同市辺野古の新基地建設計画反対を掲げる「オール沖縄」と、計画を進める政権与党・自民の双方が、来年9月までに行われる知事選と並んで「落とせない」戦いと位置付ける。投開票まで2カ月を切ったタイミングで県は設計変更を不承認とした。玉城デニー知事は選挙日程を意識したものではないとするが、衆院選では埋没しがちだった「辺野古新基地計画」に対する世論喚起への期待がオール沖縄内には広がる。
■タイミング
不承認は既定路線だっただけに、その判断時期が焦点だった。オール沖縄内には衆院選前の判断を望む声もあり、衆院選後には名護市長選に近い時期の方が選挙戦に好都合だとする意見もあった。
ただ県庁内部では、設計変更申請を審査する標準処理期間を大幅に超過している状況で判断時期を遅らせることに慎重論が高まった。今後の政府との法廷闘争も見据え「これ以上延ばすと、裁判で不利になる」(県幹部)と不承認に踏み切った。
衆院選では新基地計画の争点化を図れず、名護市を選挙区に持つ沖縄3区の議席を自民候補に奪還されたオール沖縄。不承認の判断は市長選間近ではなかったものの、オール沖縄から出馬する新人の岸本洋平氏陣営には「市長選の最大の争点になるきっかけができた」(市政野党関係者)と歓迎ムードが漂う。
■スタンス
だが自民関係者は「1月に不承認とされた方がきつかった。年をまたげば、盛り上がりは沈静化するだろう」とにらむ。現職の渡具知武豊氏陣営関係者は「基地問題には触れるだけ損だ。これまで通り、沈黙するしかない」と従来通り、辺野古新基地計画へのスタンスを示さない構えだ。
一方でオール沖縄幹部は「県は明確に(新基地に)ノーを突き付けた。現職市長がこの期に及んで『推移を見守る』だけで許されるだろうか」とけん制する。
防衛省は年内に対抗措置を取り、その後、法廷闘争に発展するとみられる。政府が従来の手法で身内同士の手続きを使って県の不承認を無効化できても、県知事選までに法廷での決着がついているかは不透明だ。
自民県連幹部は「係争中なら辺野古で知事がアクションを起こしているとの姿勢を見せられる。オール沖縄はそれで知事選でも争点化を図るということだろう」と分析する。
ただコロナ禍を経て県民の関心は経済や生活再建に比重が高まっている上、保守・経済界の離脱が続くオール沖縄の現状を踏まえ、「いろいろな人が抜け、オール沖縄の『引力』はもうなくなっている」として、世論のうねりは起こらないと強調する。
オール沖縄関係者は県民世論の辺野古への関心はいまだ高いとの見解を示し、「自民は辺野古の争点化を避けてきた。こちら側が知事の不承認もてこにどう争点化を図れるかにかかっている」と語った。
(大嶺雅俊、明真南斗、喜屋武研伍)