【深掘り】埋め立てた土砂は予定の8.3%、工事は長期化…政府が強行する基地建設の今 辺野古土砂投入3年


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
土砂投入が始まった2018年12月14日(上)と2021年11月20日の名護市辺野古沿岸部。右は軟弱地盤が存在する海域(上はヘリ、下は共同通信社機から)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、政府が辺野古沿岸部への土砂投入を始めて14日で3年。これまで投入した土砂量は工事全体で予定される量の約8・3%にとどまるものの、環境への影響は甚大だ。加えて、埋め立て予定区域の大浦湾側で見つかった軟弱地盤の改良工事が必要になったことで工期は当初計画の2倍に延び、米軍が使うまで少なくとも12年を要する。

 沖縄防衛局の地盤改良工事などの設計変更を不承認とした玉城デニー知事は、環境への影響を懸念し「無意味なものとなる可能性がある工事の継続は許されない」と全ての埋め立て中止を訴える。だが、防衛局は大浦湾の工事に必須な県の承認を得ないまま、沿岸部の埋め立てを加速化させている。

 13日も新基地建設予定区域南側で工事を続ける様子が確認された。防衛局によると、埋め立てに使った土砂量は10月末現在、約168万立方メートルで、事業全体で予定する土砂量は約2020万立方メートルだ。

 県は不承認の理由に、ジュゴンへの悪影響や地盤改良で生じる地盤盛り上がりの問題を上げた。公有水面埋立法の基準に照らして要素を絞った格好だが、県は他にも環境への悪影響を懸念する。

 土木技師の北上田毅氏が情報開示請求で入手した県環境部の意見書では、工期が延びたことで環境への影響も長期化するとの見通しを示した。地盤改良の工法を選択する上で環境影響の比較検討がされていないことも指摘した。

 2018年夏に移植したオキナワハマサンゴ9群体のうち、5群体の死滅・消失が確認されたことも強調。「濁りの堆積は直接、サンゴを覆って窒息死させる」とし、濁りの発生量を十分に予測する必要性を説いた。

 県内7地区9市町村に広げた土砂採取候補地からの運搬に関する影響が予測・評価されていないことも懸念事項だ。

 県は審査の過程で防衛局に疑義を問い合わせたが、政府は懸念を受け止めるどころか、不服審査請求で強制的に県の判断を覆して設計変更の承認を得ようとしている。 (明真南斗)