日本昔ばなしと海洋博 海洋文化館でアニメ上映<アニメは沖縄の夢を見るか>


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挿絵・吉川由季恵

 国民的テレビアニメと言われて思い浮かぶのは、『ドラえもん』や『サザエさん』あたりだろうか。テレビのアニメブームを開いた『鉄腕アトム』の功績を推す声もあるに違いない。いずれもおなじみのキャラクターたちが毎週登場し、幅広い世代に支持されてきた。

 一方、これらとはパターンの異なる『まんが日本昔ばなし』も候補の一つに挙げられよう。1975年からの約20年間に1500話近くが制作放映され、小林治、芝山努、杉井ギサブロー、辻伸一など、多くの著名なアニメーターが参加した。さまざまなタッチの絵で全国各地の民話伝承を取り上げ、市原悦子と常田富士男の語りを通じて独特な味わいを持つ日本的昔ばなしの世界が形作られていた。

 そこには沖縄の昔話も16編含まれている。『天下一の花嫁』は首里に伝わる「小牛になった花嫁」を改題したもので、久高島の『金のうり』は沖縄以外の地域にも類似の話が見られる。また『千鳥の歌』は沖縄民謡「浜千鳥節」の由来を語り、宮古島が舞台となる『すずめ酒屋』は泡盛の起源を伝える話だ。

 『天下一の花嫁』や黒島の『無人島に流された男』、宮古島の『不思議なつぼ』などでは、風景風物とBGMによる沖縄らしさの演出が見られるが、『魂を取る亡者』ではクバがさという言葉以外に地域色は見当たらない。ただしいずれの作品も、市原と常田の語りや声色によって「沖縄の昔話」という印象が薄まっていたように思う。

 ところで先に挙げた『不思議なつぼ』は浦島太郎型の話で、竜宮から不思議な壺を持ち帰るという点で、山形に伝わる『水の種』とも類似点がある。ただし宮古の話では壺に若返りの薬が入っており、残酷な結末が待っているのに対して、山形の話では持ち帰るとっくりから無尽蔵の水が湧き出て、水源を持たない貧しい山村を潤してくれる。

 この山形の話は、児童文学者の松谷みよ子によって1973年に「水のたね」として再話出版されたが、そこからインスピレーションを得たのが、パペットアニメーションで知られる岡本忠成(ただなり)だった。岡本は1975年開催の沖縄海洋博に向けて、政府出展の海洋文化館で上映するアニメーションの制作依頼を受けていたのだ。テーマは海の民話だった。

 岡本は手足や首が動く半立体の人型に彩色した布を貼るなど、独特の質感で人物や風景を描いた。また随所に沖縄の紅型風のイメージが配され、微(かす)かに琉球音階の響きも感じられる。1975年7月に海洋文化館の全天球型ドームで公開された本作は、同年度の大藤信郎賞にも選ばれている。

(世良利和・岡山大学大学院非常勤講師)