電力、ガソリン価格が上昇/脱炭素社会へ官民取り組み <県内経済回顧2021>4


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 2021年も、新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るった。観光産業は2年連続で夏場の稼ぎ時を失い、深刻な打撃を受けた。10月以降は感染状況が落ち着いたことで徐々に消費が活発化していたが、原油高に伴う電気やガソリン価格の高騰、世界的な供給網の混乱による原材料費の上昇などが経済回復にブレーキを掛け、直近ではオミクロン株の拡大が懸念されている。日本復帰50周年となる2022年を前に、沖縄経済の未来は不透明さを増している。苦境の続いた1年を振り返る。


電力、ガソリン価格上昇 原油高、消費者を直撃
 

用紙やインキなど、資材コストの相次ぐ値上げによる苦境を説明する県印刷工業組合の平山達也理事長(左から2人目)ら=11月30日、南風原町の県印刷工業組合

 新型コロナの影響から世界経済が回復する中、原油や天然ガスなどの資源の獲得競争が生じ、電気料金やガソリン価格の高騰が消費者の生活に重くのしかかった。

 火力発電用の石油や石炭の価格上昇を受けて、沖縄電力の電気料金は2021年4月分から21年2月分まで、11カ月連続で上昇している。

 ガソリンも同様で、県内のレギュラーガソリン1リットル当たりの平均小売価格は3月8日に150円を超え、10月25日には13年ぶりの170円台にまで上昇を続けた。

 新型コロナワクチンの普及などで世界経済に再開の動きが見られた一方、農産物の生産や供給網は停滞が続き、小麦や大豆、食用油、牛肉などの原材料価格が世界的に高騰した。これに伴い“県民食”である沖縄そばや島豆腐の製造業者をはじめ、輸入牛肉を使うステーキ店でも出費がかさむなど、悩みの種となった。

 (沖田有吾)


脱炭素へ官民取り組み
 

7月に運転を開始し、報道陣に公開された「中城バイオマス発電所」=7月26日、うるま市勝連南風原

 地球規模で進む気候変動への対応として温室効果ガス排出削減の要請が高まる中、離島県の沖縄でも持続可能な社会に向けて脱炭素社会に向けた動きが目立った。

 玉城デニー知事は3月に「県気候非常事態宣言」を発表し、2050年度に向けて温室効果ガス排出量を実質ゼロにすると表明した。30年度までの10年間で目指す将来像を描いた「県クリーンエネルギー・イニシアティブ」も発表し、再エネ導入エリアの拡大などの施策方針を示した。

 50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする行程表を発表していた沖縄電力も、住宅に太陽光発電設備と蓄電池を無償で設置し、発電した電気を販売する新サービス「かりーるーふ」を4月に開始するなど、化石燃料への依存を減らす取り組みを進めている。

 新電力会社が中城湾港新港地区工業団地内で建設を進めてきた「中城バイオマス発電所」も完成し、7月に営業運転を開始した。木質燃料を使うことで、年間の二酸化炭素削減効果は推定約27万トン、一般家庭約10万世帯分になる。

 (沖田有吾)