32軍壕、保存・公開へ 新基地建設で県と政府、攻防続く<県政この1年>


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 2021年の沖縄県政は昨年に引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対応に追われた1年だった。4カ月間の長期に及んだ緊急事態宣言によって社会・経済活動は冷え込み、県は事業者支援に奔走した。沖縄・奄美の世界自然遺産登録、東京五輪での県勢活躍など、明るい話題もあったが、10月上旬以降は、小笠原諸島の海底火山噴火の影響とみられる大量の軽石が県内各地に漂着。米軍の事件・事故も相次ぎ、県として危機管理が問われ続けた。政府は次年度の沖縄関係予算を前年度比326億円減の2684億円と決定。辺野古新基地問題を巡り、県と裁判闘争が続く中、玉城県政への「冷遇」との観測も広がる。激動の1年を振り返り、沖縄の日本復帰50年を迎える22年を展望する。
 (池田哲平、梅田正覚、明真南斗、塚崎昇平)

第32軍司令部壕の説明板=29日、那覇市の首里城公園

<平和・人権>32軍壕保存・公開へ ヘイト規制へ条例案も

 首里城地下に広がる第32軍司令部壕の保存・公開を巡り、県は有識者らを集めた検討委員会を発足させて会合を重ねた。委員らとの懇談会で玉城デニー知事は、平和教育の場として最大限に活用したい考えを示した。

 県は基礎調査としてドローンを使った周辺の地形調査や試掘済み区間の坑道内のレーザー測量をした。未試掘区間の調査も踏まえて保存・公開場所を決定する基本構想を策定し、整備を2027年度以降とする案を示した。

 ヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制条例の制定に向けた議論も進んだ。3~9月の準備検討会議をへて、県は有識者らの意見を聞く検討委員会の初会合を12月に開いた。条例案は、在日外国人などに対する差別的言動を規制対象とし、インターネットプロバイダーに削除を求めたり、差別的言動をした者の氏名を公表したりする規定を含む。

<新基地建設>県と政府、攻防続く

埋め立て工事が進む米軍キャンプ・シュワブ沿岸=11月25日、名護市辺野古

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、玉城デニー知事は11月25日、沖縄防衛局が申請した埋め立て予定区域の軟弱地盤改良工事などの設計変更を不承認とした。防衛局は12月7日、対抗措置として不承認の取り消しを求め行政不服審査法に基づく審査請求をした。法廷闘争に発展する公算も大きく、新基地建設を巡る県と国の攻防は2022年も続く見込みだ。

 県は不承認の根拠に地盤調査や環境保全の不備を挙げたが、国は不承認を「埋め立て事業阻止が目的で、行政権の著しい乱用で違法」と取り消しを求めた。県は審査請求の手続きとして、1月初旬に国土交通相に弁明書を提出し、正当性を主張していく方針。

 新基地建設を巡るサンゴ移植でも国と県の攻防があった。

 7月29日にサンゴ移植を実施した沖縄防衛局に対し、県は高水温期の回避など条件違反を理由に、翌30日に許可を撤回した。防衛局の審査請求を経て、農林水産相は8月5日に撤回の効力を停止し、防衛局は翌6日から作業を再開した。農相は12月28日に県の撤回を取り消した。