【記者解説】地域の「人間関係」希薄に…前回調査から変わったこと、変わらないこと<復帰50年・琉球新報県民意識調査>


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模合のイメージ

 今回で5回目となった琉球新報社の県民意識調査の結果を見ると、人間関係の希薄化が進展し、沖縄独自の文化や慣習などに関する考え方に大きな変化が起きていることが読み取れた。半面、戦争体験を継承する重要性、お金や仕事といった経済面での悩みなど、変わらない側面もあった。沖縄の日本復帰50年の節目を前に見えてきた新時代の県民像は課題を浮かび上がらせると同時に、解決へのヒントも与える。

 変化が際立つのは、模合や地域の行事・祭りへの参加といった「人間関係」だ。人々のつながりが多様化する中で、旧来からの共同体を基礎にした地域のつながりはその在り方が岐路に立たされている。

 お酒の好み、トートーメー(位牌)を誰が受け継ぐべきかなど独自の文化、慣習が変わりつつあるのは、世替わりを重ねる中で多様な価値観や物を受け入れてきたチャンプルー文化の土壌があるとの見方もできる。

 一方、沖縄県民であることを誇り、沖縄戦を語り継ぐべきだとの考え方などは変化が見られず、普遍的な価値観として位置付けられている。

 だが、生活の悩み、気になる沖縄の問題、どんな沖縄になってほしいかを聞く質問に関しては、収入・所得、経済的な豊かさなどが変わらず1位だ。復帰後、地元への循環が少ないザル経済という構造的な問題が指摘される沖縄経済。この硬直した現状を変え、意識に変化をもたらすことができるかが改めて問われている。
 (仲村良太)