「官製ワーキングプア」悪化 業務量同じで勤務時間減 期末手当出でも月給減


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市町村が公開している会計年度任用職員の公募資料。勤務時間がフルタイムとならないよう調整されている職種もある

 2020年度から始まった会計年度任用職員の制度は「官製ワーキングプア」の解消にはならず、むしろ固定化した可能性がある。厳しい雇用環境を改善するため、労働組合の組織化に向けた動きも出てきた。

勤務「7時間」

 「勤務時間7時間、給与月額13万2千円」「1日7.25時間、月額13万6600円」

 市町村のホームページには、労働時間を7時間か7時間をわずかに超える時間に指定した会計年度任用職員の公募が並ぶ。週5日勤務だと1日7.25時間は週36.25時間。パートタイムの条件となる週37.5時間以下に収まる。給与は月額13万~20万円程度。時給や日給も多い。

 南部自治体の会計年度任用職員の男性は「これまでと業務量は変わらないのに、労働時間が短くなった。期末手当は出るが、月給が減るので期待したような改善にはなっていない。ダブルワークの職員も依然として多い」と肩を落とす。

 自治体が会計年度任用職員の「公募」を始めると、職場には緊張感が走るという。「公募すると新たに人が雇われるが、その分、今いる人がいなくなる。みんな『自分かもしれない』と思っている」と説明する。公募が出るのは主に年末。職員は仕事がなくなるかもしれないという不安を抱えたまま年末年始を過ごす。「何度も職員を取り換えられると、業務の改善もできない。市民にとってもマイナスだ」と憤る。

雇用環境改善

 県内41市町村のうち、会計年度任用職員の労働組合が組織化されているのは、那覇と浦添の2市のみだ。那覇は単独の組合があり、浦添は正規職員の組合に加入することができる。30年以上の歴史がある那覇は、地道に職場環境を改善してきた。

 那覇市会計年度任用職員等労働組合によると、市では会計年度任用職員も毎年昇級し、昇給額の上限も撤廃された。有給の「子の看護休暇」など、国の基準を超えた処遇もあるという。

 組合関係者は「市議が議会で追及してくれるし、親組合(正規職員の組合)も協力してくれる。少しずつだが毎年条件は良くなっているという実感がある」と話した。

 12月には、2市で組織していた連絡協議会に、糸満市の職員がオブザーバー加盟するなど会計年度任用職員の組織拡大に向け、新たな動きが出てきた。

 上部組織の自治労県本部の担当者は「これまで組織化されていなかった背景には、非正規の待遇を改善すると正規の待遇が悪くなるという誤解もあった。組織拡大を図り、多くの課題に向き合いたい」と語った。
 (稲福政俊)


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