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「首里織」にみる地域ブランド継承への道、一時は衰退も<けいざい風水>


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 沖縄県には、染織物、漆器、陶器、琉球ガラス、三線など、多くの伝統工芸品があります。中でも、染織物は沖縄県を代表する伝統工芸品となっており、首里においては「首里織」が有名です。県立芸術大学では工芸専攻染分野、県立首里高校では染織デザイン科が設置されるなど、染織物継承に特色のある地域となっています。

 また、2022年5月には、「琉球びんがた事業協同組合」と「那覇伝統織物事業協同組合」が国と那覇市の支援を受けて、染織物が体験できる新たな施設「首里織物館suikara」の開館を首里当蔵町で予定しています。

 沖縄県の調査報告書によると、伝統工芸品「首里織」は、戦後は後継者の確保難等から衰退の一途をたどり、継承が危ぶまれた時期もありました。しかし、関係者の努力と熱意によって伝統は引き継がれ、1974年に「本場首里の織物」として県無形文化財の指定を受け、83年には伝統工芸品として通商産業大臣の指定、2006年には地域ブランド「首里織」として商標登録を受けています。

 「首里織」の生産額は1989年(平成元年)に6500万円だったのが、2019年(令和元年)には3500万円に減少しています。一方で事業所数においては、89年の43事業所から増減があったものの、2019年現在、42事業所を維持しています。

 今後は、首里城再建とあわせて、観光と伝統工芸品の連携による地域発展ならびに地域ブランドの継承に期待したいです。

 (沖縄銀行鳥堀支店支店長 山里宏樹)