宮古島「幻の高級魚」ウブシュ、水揚げゼロの異常事態 軽石で出漁できず、中国情勢も影響


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 沖縄県・宮古島では冬になると、魚の中で一番うまいとされる魚が揚がる。その名は「ウブシュ(和名スマ)」。全身に脂がのり、とろけるような舌触りにうま味の強い高級魚。伊良部漁協で例年、4~5トンほど水揚げされるが、今年は軽石の影響で出漁できない状況が続いており、11日現在で水揚げゼロの異常事態に陥っている。 

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 ウブシュはインド・太平洋の熱帯、亜熱帯の海域に分布する。サバ科で、カツオに似た姿からスマガツオとも呼ばれる。背側に青黒色で細いしま模様があり、胸びれの下にある黒い点が特徴。最大で全長100センチ、重さ10キロになる。

 ウブシュが揚がると島民はこぞって漁協や鮮魚店に駆け付ける。ほとんどが島内で消費され、島外には出回らない幻の魚だ。マグロのトロもしのぐ味わいとも評され、市場価値は年々、上昇しており、キロ当たり2千円の高値が付くこともある。

 伊良部漁協ではカツオ船が12月下旬~3月上旬の期間限定で、好漁場の尖閣周辺海域でウブシュを漁獲する。同漁協の伊良波宏紀組合長によると今冬は軽石によるエンジン故障を避けるため、所属するカツオ船全てが尖閣周辺への出漁を避け、近海での漁に回っている。「尖閣周辺まで一昼夜かかる。中国情勢の問題もある。軽石で故障して動けなくなったらと考えると船は出せない」

 漁船はエンジンを冷却するため海水を吸い上げる必要があり、その際にどうしても軽石が混入する。漁師はそのリスクを背負いながら近海に漁に出る。

 漁港にも連日、大量の軽石が押し寄せ、漁師らが回収している。伊良波組合長は「死活問題だと行政に支援を求めても動きが鈍い。どうしたらいいのか。行政には漁民の立場に立って動いてほしい」と訴えた。
  (佐野真慈)

 


 

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