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お世話になった方へ恩返し ヘリオス酒造ヘッドブルワー・松田あゆみ<仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「何が分からないのか分からない!」。この現象に陥ったのは大学入学を希望する留学生対象のプレスクールに通った時だ。高校で英語科を卒業した私は理系に触れることがほとんどなかった。

 プレスクールではドイツ語はもちろん英語、数学、化学そして高校の授業にはなかった物理が必須だった。初めて目にするものをドイツ語で…。今考えても良く乗り切ったものだ。

 「難しいね、分かる?」私の前に座っていた子が振り向いてそう話しかけてきた。エクアドルから来たレディという名の子だ。ビール好き、という理由から私たちはすぐに意気投合した。それからすぐに仲良くなったマレーシア出身のクリスはめっぽう理系に強かった。何が分からないか分からない2人に放課後や週末を使って彼は根気よく勉強を教えてくれた。

 ドイツの方と結婚していたレディの義理のご両親にもとてもお世話になった。研修先のビール工場を紹介してくれ、なんと住む家までも探してくれたのだ。私は2人が大好きで一人でもお家に遊びに行き、お泊りしていたくらいだ。

 つくづく思うのだがドイツで過ごした8年間、辛かったことよりも楽しかったことしかほとんど思い出さない。これは私が本当にたくさんの人に恵まれていたからである。

 私の造ったビールをドイツへ持って行き飲んでもらう。これが私のお世話になった方々への恩返しだと思っている。