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もう一つの全国最下位…有所見率と沖縄経済の関係<沖縄経済の針路>4


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 県経済を象徴する枕ことばは「全国最下位の1人当たり県民所得」ですが、すぐにでも改善すべき「もう一つの全国最下位」があります。

 沖縄県は、健康診断で何らかの異常が見つかる「有所見率」が10年連続で全国最悪です。「肥満症の人口比率」なども全国最悪です。バランスを欠いた食生活や車社会による運動不足などが原因と指摘されます。

 これと軌を一にして、平均寿命はかつての1位から順位を落とし、女性は7位、男性は36位まで転落しています。健康寿命も同様の傾向です。1995年には県知事が「世界長寿地域宣言」を出し、2004年には米国「タイム」誌が沖縄の健康長寿を特集したことを考えると、隔世の感があります(「健康長寿県」の誤解・幻想は、まだ世界的に生きているようですが)。

 行政や医師会、大学などが「健康長寿県の復活」に取り組んで来ましたが、最近は「医療分野だけに任せておいて良い問題ではない」と、経済界も積極的に乗り出しています。

 経済界では、全国的に「健康経営」の考え方が広がっています。これは「社員の健康管理を経営的な視点で捉え、この分野に積極投資を行い、社員の活性化や離職率の低下を通じて、組織の生産性を向上させ、業績・株価の向上にもつなげようとする」施策です。県内でも、官と民が連携するプロジェクトが発足し、「健康経営宣言」を行う企業が増加しています。「稼ぐ力」の強化にも寄与するだけに、こうした取り組みが一段と広範化することが期待されます。

 ところで(一見)話は変わります。県民の平均年齢が全国で最も若く、人口も増加を続けているだけに、ピンとこないと思いますが、あと10年もしないうちに、沖縄県の人口は減少に転じる見込みです。国立社会保障・人口問題研究所の最新推計によると、沖縄県と東京都の人口だけが2030年まで増加を続けた後、全都道府県の人口が減少に転じます。同時に、沖縄県では、高齢者(65歳以上)人口が全国一のスピードで急増していきます。

 具体的にイメージしてみてください。近い将来の沖縄県では、全体の人口が減少するだけでなく、内訳を見ると、主な働き手である65歳未満の人口が減る一方、「これまでの不摂生がたたって健康とは言えない高齢者」がどんどん増加していくのです。年金・医療・介護などの面では、現役世代の負担が一段と重くなっていきます。

 ちなみに、経済成長率は、供給サイドから見ると、「労働力人口の伸び」と「生産性の伸び」の合計で決まります。人口は社会活力や経済成長の源泉です。このままだと、沖縄県の労働力人口は減っていきます。現在、沖縄県の高齢者の就業比率は全国で最も低い状態ですが、高齢者の就労を促進する法改正もあり、今後は65歳以上の方がどんどん働く世の中になるでしょう。

 ただ、健康がすぐれないようでは、ご本人のためになりません。元気に働ければ、労働力人口が増えるだけでなく、生産性の向上を通じて県経済の「供給力」改善が期待できます。社会保障の受け手でなく担い手になれば、現役世代の負担増加も抑えられます。

 かつての健康長寿を支えていた一因は、塩分や脂肪の少ない伝統的な沖縄料理だと言われます。4月からは、沖縄県を舞台とするNHKの朝ドラ「ちむどんどん」が始まります。テーマの一つは「沖縄料理」です。朝ドラを見ながら、一人一人が食生活を省みて、健康を改善させる契機にしてはどうでしょうか。

(桑原康二、元日銀那覇支店長)

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  沖縄が日本に復帰して今年で50年。県民所得が全国最下位水準で貧困問題を抱えるなど県経済の課題は多い。沖縄の経済を鋭い視点で見つめてきた元日銀那覇支店長の桑原康二氏に現状分析を基に提言をしてもらう。


 くわはら・こうじ 1965年広島県生まれ。シェークスピアと西洋美術史の研究者を志し、東京芸大を志望するが断念し、東京外大・英米科に入学。紆余(うよ)曲折を経て再度方向転換し、89年に日本銀行入行。那覇支店長などを務め、現在は会社役員。