〈97〉子どもの昼間尿失禁 叱らず定時排尿指導


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 自分の意思に反して尿が出てしまう、いわゆる「おもらし」のことを、尿失禁といいます。そして目覚めている時の尿失禁を昼間尿失禁といいます。お昼寝中の尿失禁は夜尿と定義され、ここでお話しする昼間尿失禁とは別です。

 腎臓でつくられた尿は、下腹部にある膀胱(ぼうこう)にたまります。生まれてから1歳頃までは、膀胱に尿がたまると反射的に膀胱が縮んで排尿します。1歳を過ぎると、尿によって膀胱の壁が引き伸ばされることを「尿意」として感じ取るようになり、2~4歳頃には尿意を感じてもトイレに着くまでは膀胱が縮まないように脳から指令を出し、排尿の準備ができたらこの指令を解除して尿を出すことができるようになります。

 お子さんの昼間尿失禁は、この「尿をためて出す」という機能の発達の個人差によることが多いです。大人は「ものすごくおしっこしたくて漏れそう」という最大尿意だけでなく、「少ししたい」という初期尿意、「割としたい」という通常尿意も知覚でき、これに基づいて排尿するタイミングを決められます。

 一方昼間尿失禁のあるお子さんは、初期尿意や通常尿意を知覚できず、保護者に「おしっこは?」と聞かれて「ない」と答えたその5分後に突然最大尿意を感じてトイレに駆け込んだものの間に合わない、ということが起こります。

 このため「どうして漏れる前にトイレに行かないの!」と叱っても解決にはならず、行うべきことは定時排尿指導です。通常尿意を感じるぐらい膀胱に尿がたまっているであろう時間、具体的には朝起きた時、午前中半ば、昼休み、午後早め、午後遅め、寝る時にトイレで排尿を試みさせます。

 子どもさん自身が「おしっこしたいと思わなかったけどトイレにいったらおしっこが出て、おもらししなくなった!」という成功体験を積み重ねることで、初期尿意や通常尿意を知覚できるようになり、適切なタイミングで排尿することができるようになります。

 医療機関を受診したお子さんの4割は、平均8カ月の定時排尿指導で昼間尿失禁が治ったという報告があります。

(川合志奈、県立南部医療センター・こども医療センター 小児泌尿器科)