若年の方も高齢の方も、年齢とは関係なく運動は大切です。また、ご病気をもたれている方も、病気を指摘されたことがない方も、病気の有無に関係なく、運動は多くの効果をもたらします。
運動とは逆に、ずっとベッドで横になり、体を動かさないことは、いつのまにか体を衰えさせます。例えば、3週間ベッドで横になり続けると、心臓の筋肉は薄くなり心臓の機能は低下します。1週間寝ているだけで筋力は10~15%低下します。2週間寝ていると骨密度は減少し、同じく2週間で白血球の能力(貪食能)は落ち、免疫能が低下します。他にも血圧の調節機能が落ち、血糖値が高い時に下げようとする能力も落ちるなど、さまざまな報告があります。
一方、運動は、上記の全てに効果があります。心臓・呼吸機能の向上、筋力の向上、骨密度・免疫能の向上、高血圧の改善、糖尿病の改善などです。うつ傾向、認知機能の低下の改善にも効果があると言われており、多方面に効果があります。
そのため、今患っているご病気の改善や、脳梗塞、心筋梗塞、骨折等の新たな病気の予防にもつながります。運動は治療となるため、治療でお薬を毎日飲むのと同様に、継続することが大切です。
毎日の生活に運動を取り入れてみましょう。少し息がはずむ程度の歩行は、心肺機能の向上につながります。筋力トレーニングも取り入れてみましょう。例えば、関節の痛みのない範囲でスクワットをしてみる。最初は手すりをもっても構いません。自分ができる姿勢でやりましょう。
ベッドで横向きになり上の足をゆっくり上げ下げする“中殿筋”という筋肉を鍛えるトレーニングも転倒予防に効果的です。筋力トレーニングはまずは1セット10回からでも構いません。できるようになったら徐々に回数を増やして下さい。
70代の神経疾患を患っている方で、毎日スクワット千回を目標にしている方もおられます。車いすで生活されていた方がつえを使って歩いて生活できるようになり、今でも続けておられます。運動は万能な治療です。ぜひ、みなさんの生活に取り入れてみてください。
(中濱潤美、ちゅうざん病院 リハビリテーション科)