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スタートはここから ヘリオス酒造ヘッドブルワー・松田あゆみ <仕事の余白>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「冬には戻る」。2008年夏、家族にそう約束をして始まった私のドイツ生活も、気が付けば8年が経っていた。イケア置き去り事件などこれまで色々ドイツの珍道中を書いてきたが、「肝心の『修行』の部分がないじゃないか!」と言われそうだ。

 卒業の大きな肝とも言える最後のブルワリー実務を終え、残っていた教科全ての合格通知をもらった時は「これでやっと解放される」と小さくガッツポーズをしたのをよく覚えている。最後の課題、卒業論文も研究パートナーのドイツ人の助けもありなんとか無事書き終えることができた。

 聞けば彼は学部などを変更し、既に4年ほど大学にいて私が卒業する翌年には自分も卒業する、と言っていた。言葉もスムーズじゃない私に根気よく付き合ってくれたものだ。

 そんなこんなで16年夏、全ての過程を修了し「ディプロム・ブラウマイスター」という国家資格を取得した。商社に勤めて日本とドイツを行き来する大学の大先輩から「仕事ではなく、個人でこの資格を取った日本人は5人ともいない。自信を持って帰国しなさい」とありがたいお言葉をいただいたのだが、日本でしっかり働けるのか不安いっぱいで私は帰国した。

 国際通りにある直営店での責任者を経て帰国から3年後、私はいよいよ名護本社勤務となる。

 ドイツ修行と言ってはきたが、私の修行はスタートを切ったばかりなのである。