【識者談話】名護湾の低空飛行は日米合意の乱用 米軍、県民の安全を軽視(前泊博盛・沖国大教授)


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前泊博盛氏(沖国大教授)

 日米安全保障条約の規定に基づいて米側に日本国内の施設および区域の使用が許されているのは、訓練による民間地での事故を防ぐためだ。訓練は提供区域内に限るべきだが、米軍は「基地間の移動」を理由に民間地での低空飛行訓練などを実施してきた。

 だが、今回は基地間の移動ではなく明らかな訓練で、日米合意を乱用していると言わざるを得ない。米軍は提供区域で訓練する場合は使用期間などについて日本側に事前に通告する。その通告内容を日本側は関係行政機関を通じて周知することになっている。

 安全確保のための措置だが、今回は提供区域外の訓練で通告すらしていない。県民の安全を軽視していると言わざるを得ない。基本的な日米間のルールを無視すれば信頼関係は構築できず、日米同盟そのものが脆弱(ぜいじゃく)化してしまう。

 民間地で訓練を制限されるのは当然だ。米国内ではその原則を守っている米軍が、沖縄では提供区域外で訓練しているのは日本政府が黙認しているからだ。

 県や日本政府は断固として抗議すべきだ。ここで歯止めをかけられるかどうかが非常に重要で、前例を放置すれば米軍はこれからも恒常的に民間地で通告なく訓練を実施し続けるだろう。
 (安全保障論)


米海軍、名護湾でのつり下げ訓練認める 提供域外で高度も違反か
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