水没や落盤、進む壕内の劣化…32軍壕の第1坑口公開、作業加速が課題


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
第32軍司令部壕跡=那覇市首里真和志町

 首里城地下の第32軍司令部壕の保存・公開を巡り、県が28日に示したロードマップは、守礼門に近い第1坑口について2026年度の公開に向け整備を進めると明記した。同じく公開方針を示した第5坑口と異なり、第1坑口は未発掘で位置特定の調査が22年度に始まる。内部状態の把握もこれからで「公開までの難易度は両者でかなり異なる」(佐々木靖人委員)ため、難工事も予想される。壕内の劣化も進み、取り組みの加速化が求められる。

 昨年12月の前回会合では、首里城正殿の完成見込みとなる26年度に合わせて整備・公開を求める声が強く上がった。今回のロードマップは、これを受け入れた形だ。

 一方、昨年7月の台風6号襲来後に行った内部調査では、第2、第3坑道で一部水没するなどの被害が初確認された。水が引かないため、ポンプを使って強制排水した。

 今年2月の調査では落盤がみられたことも報告された。崩落を防ぐため戦後に設置された鉄製の構造物「支保工」が天井に施されていなかった部分で、調査を担った日本工営の担当者は「(前回調査以降の)30年間の風化、経年劣化で落盤が発生した」との見方を示した。

 同日の議論では32軍壕の文化財指定も議論になった。県文化財課の担当者は、壕内の発掘調査が未実施で内部状態がどう変更されるかも決まっていないなどとして、指定の是非を明言しなかった。これに対し、沖縄戦研究が専門の吉浜忍委員は、指定する方針を示した上で、公開に必要な議論を進める必要性を指摘。坑口周辺の調査を先行して行うよう訴えた。

 また、一中健児之塔裏の壕など、周辺の戦跡と結びつけて壕の役割を伝える必要性も訴えた。早稲田大名誉教授でトンネル工学が専門の小泉淳委員は今回示したロードマップについて「今後の調査の進展に従い、改編されていくべきだ」と注文を付けた。
 (知念征尚)