【識者談話】教科書だけでは間違いを教える可能性も…沖縄の歴史、体系的な副読書必要(沖大客員教授・新城俊昭氏)


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新城 俊昭氏

 独自の歴史がある沖縄を、教科書の限られたページ数の中で扱うのは無理がある。今回検定を合格した教科書は、沖縄の歴史を簡易的な用語や事実として記載しているだけで、記述からはその事象背景を想像することは難しい。そのため教師に十分な知識と授業スキルがなければ、生徒がテーマを持ち、正しく沖縄の歴史を理解することはできないだろう。10・10空襲に触れず東京大空襲を「最初の無差別攻撃」としている記述や、日本軍の強制性を弱めた「集団自決」(強制集団死)の説明などを見ると、間違った歴史を教える可能性が非常に高い。沖縄戦に関する記述も、1945年3月の慶良間上陸に触れず、4月の沖縄島上陸から書き出している教科書が複数ある。8月15日の終戦の日を過ぎても、軍による住民虐殺が続いたが、その記載がない教科書もある。教師からの投げ掛けがなければ、沖縄の歴史を学ぶ機会すら生まれない。

 琉球・沖縄史を体系的に学ぶには、独自の副読教科書が必要だ。教師が沖縄を学ぶ場の設定も求められる。同時に、日本史の一部としてではなく、小中学校から体系的に沖縄の歴史を学べるようなカリキュラムを組まなければ、沖縄の歴史をつなぐことは不可能に近い。
 (琉球・沖縄史教育)