高校教科書「辺野古」に差 文科省検定 学生の理解に影響も


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実教出版「日本史探究」の1ページ。「沖縄のアメリカ軍基地」の地図資料では嘉手納町と宜野湾市を拡大し、市町が抱える基地負担の大きさを示した

 文部科学省は3月29日、2023年度から高校生が使用する教科書の検定結果を公表した。歴史、政治経済のほぼ全ての教科書で、米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る基地問題に関する記述があった。記述内容や取り上げ方に濃淡があり、なぜ基地問題が混迷して解決に至っていないのか、記述からは読み取れない教科書もある。なぜ県民の多くが辺野古新基地建設に反対しているのか、それでもなぜ辺野古新基地建設が進められているのかなど、背景や事実関係を読み取れない教科書も多い。教師の知識によって、学習内容に差が出る可能性がある。

 実教出版は「日本史探究」「世界史探究」「政治・経済」で、それぞれ特集ページを設けたり資料を多用して細かく紹介したりした。検定を通った「日本史探究」の2冊のうち1冊で、朝日新聞社が作成した「沖縄と日本本土のアメリカ軍基地面積の割合の推移」のグラフを掲載した。本土の基地負担が減る一方で沖縄は負担が増え、今も基地の過重負担が続いていることが分かる。

 地図資料では宜野湾市と嘉手納町を拡大し、基地面積が両市町に占める割合を具体的に可視化した資料もあった。

 「政治・経済」では特集で「基地負担軽減のための日本政府の努力は不十分で、沖縄の基地負担率は増加した」と記述し、基地問題に関する年表では2019年に「県民投票で投票者の72%が新基地建設に反対」と記した。

 第一学習社は日米安保に関するページで、かつて日米両政府が沖縄返還交渉に当たり、核密約があったことを注釈で説明した。東京書籍は「倫理」でも、沖縄の基地問題に触れた。

 山川出版社「日本史」では普天間飛行場移設問題には触れず「沖縄ではどのような問題が生じていると考えられるか」と問う設問があった。

 (嘉数陽)