〈102〉医療的ケア児 法成立で支援義務化


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2021年6月11日、医療的ケア児支援法が成立し、医療的ケア児支援が努力義務から国や自治体の義務となりました。この法案ができたことにより障がいを持つ方にとって、より住みやすい社会へ変わることが期待されます。

 しかし、読者の皆さまに医療的ケア児とはなにか、課題がどのようなものかなど、まだ認知されていないのではないかと思い、今回筆を執らせていただきました。

 医療的ケア児とは、日常生活で人工呼吸器、経管栄養、吸引、吸入など医療的ケアが必須な子です。原因として、先天性、後天性で大きく分類され、先天性では染色体異常や胎内、出生時の原因(胎内感染症、低酸素、分娩(ぶんべん)異常、新生児仮死など)があります。後天性では、溺水事故、交通事故、感染症などがあります。残念なことにこれらは永続的な障がいであることが多く、治療法がない場合がほとんどです。

 厚生労働省の調査では、障がいを持たれている方(知的、身体含む)は全国民の約7.6%とあり、この数は医学の進歩とともに毎年少しずつ増加してくることが予想され、社会環境の整備が望まれています。

 医療的ケア児が過ごす支援体制が整備されていないため、親御さんに24時間付きっきりでの介護をお願いすることとなり、そのため、離職、貧困、離婚、社会からの孤立、虐待、教育現場での親の付き添い問題など福祉、教育、医療の場で問題がでてきております。

 これは一言でお伝えすると、「地域支援体制の不足や連携不足」が課題であり、成人の地域包括支援体制と比較して未熟で、また、努力義務であったため、自治体ごとで大きく支援体制の差が見受けられておりました。

 今回、このような法律が成立したことは私たち関係者にとって非常に喜ばしいことと考えております。

 最近はコロナ禍で医療的ケア児・者の方にも日常生活でお会いできる機会が減り寂しい限りですが、またそのような日常が戻ってくることを切に願い、筆を置かせていただきます。

(宮城大雅、沖縄南部療育医療センター 小児科)