【深掘り】進まぬ普天間返還、負担軽減へ焦燥感 宜野湾市と沖縄県にすれ違いも


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米軍普天間飛行場について意見交換する松川正則宜野湾市長(左)と玉城デニー知事=12日、県庁

 1996年に日米両政府が普天間飛行場の全面返還に合意してから、12日で26年が経過した。同飛行場の移設に伴う名護市辺野古新基地建設に反対する玉城デニー知事に対して、宜野湾市の松川正則市長は同日、「(政府と)譲歩し合うような取り組み」を求め、問題が進まない現状では新基地建設に関し「容認せざるを得ない、選択肢がない」と述べるなど、容認姿勢を改めて示した。

 一方、会談で玉城知事は「県外国外への道筋をたてるべきだ」と改めて辺野古新基地建設によらない解決策を求め、両者の意見はすれ違った。会談後、松川市長は負担軽減に取り組む考えを示した県の姿勢に、一定理解を示しつつも、辺野古に関して「やっぱり違う感触があった」と述べた。

■0か100か

 宜野湾市長が知事に、普天間飛行場の危険性除去を直接要請するのは異例だ。松川氏が玉城知事に辺野古新基地建設問題で「譲歩」を迫る背景には、普天間問題が辺野古の賛否のみで取り上げられるなど「政治的な0か、100か」(松川市長)で議論が終結し、住民の過重な基地負担軽減や危険性除去が進んでいない現状への焦燥感がある。松川市長は近く上京し、政府に対しても具体的な対応策を求める。

 沖縄防衛局の目視調査によると、2021年に同飛行場で航空機が離着陸した回数は前年比3・0%増の1万8017回で、17年4月の調査開始以降、通年では過去最多に上った。岩国基地へ移設したはずのKC130空中給油機も頻繁に飛来し、タッチアンドゴーなどの訓練を繰り返すなど、負担軽減とは、かけ離れた状況が続く。

■国側の「リンク」

 ただ、官房長官が主催し、知事や宜野湾市長が話し合う「普天間飛行場負担軽減推進会議」は2019年4月以来、3年間開かれていない。仲井真県政下の2014年2月に発足したが、同年の知事選で新基地建設に反対する翁長雄志前知事が就任して以降、開催が滞っている。同会議の目的は危険性除去だったはずだが、政権側が新基地建設と「リンク」させ、議論の門戸を閉ざしているとの見方もできる。

 普天間飛行場ではステルス戦闘機F35の飛来や、基地周辺での有機フッ素化合物(PFAS)汚染など、負担軽減推進会議発足後に顕在化した課題も多い。県関係者は「既存の問題はほとんど解決しないまま、提起すべき課題が増えていく。(普天間飛行場負担軽減推進会議の下部の)作業部会では議論は進まないので、上の会議を開く必要がある」と強調した。
 (池田哲平、塚崎昇平)