【記者解説】新たな沖縄振興、「自主性」はなぜ消えたのか?国と県の距離感を反映


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内閣府が示した沖縄振興基本方針について審議結果を伝える文書を西銘恒三郎沖縄担当相(右)に手渡す沖縄振興審議会の高橋進会長=13日、東京

 沖縄の日本復帰50年の節目で示された、政府の新たな沖縄振興計画の「基本方針」は、沖縄の「自立的発展」という沖縄振興の意義を問い直させる内容となった。

 2012年から10年間の第5次振計では、県が使途を決められる「一括交付金」制度が導入されたのと同時に「沖縄の自主性を最大限に尊重」との文言が加えられた。

 一方、22年度の沖縄関係予算で一括交付金が大幅に減額されたのと歩調を合わせるかのように、今回の基本方針では、沖縄の自主性を担保する上で象徴的な文言が削られた。米軍普天間飛行場の移設問題で対立する県と国との距離感が反映された形だ。

 「施行後5年以内の検討・見直し」を明記した点にも政府の思惑が透ける。沖縄振興特別措置法の改正議論で、与党自民党は検証時期について「5年」と明示せず、幅を持たせることにこだわった。複数の自民党議員は「検証時期は1年後でも2年後でもいい」と口をそろえており9月に控える県知事選の結果を見極める意図がうかがえる。

 沖縄戦の惨禍と長年の米軍統治で負った沖縄と「本土」との溝はなお深い。その溝を埋めるための沖縄振興ではなかったか。政治状況に左右される振興の在り方を変えない限り、沖縄の「真の自立」はなし得ない。
 (安里洋輔)


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